ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
絶対に夢をあきらめない……。
寺川綾ら競泳メダリストの五輪秘話。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA
posted2012/07/31 11:50
予選タイムでは4位、準決勝で3位、そして決勝で見事銅メダルを獲得した寺川。「ロンドンまでに悔いを残したくない。先は何も考えられない」と五輪大会前に語っており、大会後の現役引退を覚悟で臨んだ本番であった。
引退危機から見事に復活した寺川の覚悟をこそ称えたい。
成果はすぐに表れた。'09年、日本選手権で50、100、200mの3冠に輝き、同年の世界選手権代表に選ばれ、日本代表復帰を果たしたのだ。
以後、日本代表としてコンスタントに活躍を続けてきた寺川は、ロンドン五輪に向けても万全の準備を図ってきた。
目標タイムを、58秒60~70に設定。そのために何が必要か、緻密に分析し、縮められる可能性のあるところを見つけては練習で埋めていった。
代表選考会である4月の日本選手権では、オリンピックを想定し、1日の過ごし方をシミュレーションしてみた。
そして迎えたのがロンドンであり、成果を存分に発揮した結果が銅メダルであった。
振り返れば、平井コーチの手腕は見逃すわけにはいかない。
それとともに、北京五輪で代表を逃し、引退してもおかしくない年齢に達していたにもかかわらず、あきらめずに再スタートし、ひたむきに練習に取り組んできた寺川の心あればこその今日である。
寺川だけでなく、入江、鈴木らが、続々とメダル獲得!
あきらめなければ夢がかなうとは限らない。しかし、あきらめてしまえば、チャンスはない。
チャンスをものにした寺川は、涙ながらにこう語った。
「順位もメダルの色も、目指していたものとは違いましたけれど、うれしいです」
8年ぶりのオリンピック出場で、ついに獲得したメダル。目標を金メダルとしてはいたが、想像を絶する厳しいプレッシャーの中で自己ベストを叩き出してのメダル獲得は、快挙といえる。
この日活躍したのは、寺川にとどまらなかった。女子の背泳ぎ100mの次に行なわれた男子背泳ぎ100mでは、入江陵介が銅メダルを獲得。続く女子平泳ぎ100mでも、鈴木聡美が同じく銅メダルを得たのだ。