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戦力を最大化するリーダーの資質は?
NBAの名将も成果をあげた実践理論。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byNBAE/Getty Images
posted2012/07/31 10:30
シャキール・オニールに指示を与えるレイカーズのヘッドコーチ、フィル・ジャクソン。ジャクソン在任中の1999年~2011年にレイカーズはNBAの歴代優勝回数2位を達成 し、黄金時代を築いた。
ロンドンオリンピックがいよいよ開幕した。世界の頂点を争う真夏の熱戦を楽しみにしている読者も多いことであろう。
日本がオリンピックに参加してから100年となる今年のオリンピックには、293名の日本選手が出場する予定で、筆者も活躍に期待している。
その期待とともに、今回は、スポーツでの勝利の裏にある「リーダーシップ」について考えてみたい。前回は日本競泳のチーム編成についての考察を深めながら、強いチームの作り方、つまり「バランス」の意味するところについて書いた。では、チームを強くするのに必要なリーダーシップとは、どのようなものだろうか。
今回取り上げるのはNBA。卓越したオフェンス・ディフェンスセンス。airと形容されるほど滞空時間の長い豪快なダンクシュート。ここぞという場面で期待にこたえてくれる勝負強さ。NBAと言えば、歴代1位の平均得点を誇るバスケットの神様マイケル・ジョーダンを思い浮かべる読者も多いことであろう。
「今まで何度も、何度も、何度も失敗した。だから、私は成功するんだ」。ナイキのCMに使われた彼の言葉とその挑戦する姿勢は、今も多くの読者の心に焼き付いているのではないだろうか。
今回は宮地陽子氏が「Number」745号で執筆した、「フィル・ジャクソンの究極スター操縦法」を参考に、その卓越したリーダーシップを見ていきたい。
マイケル・ジョーダンに優勝をもたらしたヘッドコーチの存在。
ジョーダン率いるシカゴ・ブルズに優勝をもたらした人物。それが、名将フィル・ジャクソンである。後に率いるレイカーズとあわせて、NBA史上最多の11回の優勝を成し遂げたヘッドコーチの名は、ジョーダンに比べれば、はるかに知る人は少ないかもしれない。しかし、'84年に入団したジョーダンが最初にNBA優勝を果たしたのは、ジャクソンがヘッドコーチに就任した後の'90-'91年シーズンである。カリスマプレーヤーをもってしても、NBAの頂点を極めることは難しかった。
同じくレイカーズの場合も、シャキール・オニール、コービー・ブライアントなどスーパー級のスターが在籍していたが、彼らはジャクソンが99年にヘッドコーチになるまで優勝を経験していない。
つまり、チームというのは、スタープレーヤーだけでは優勝できない。その裏には名将の存在があるのだ。また、本来のリーダーシップとは目立つものではなく、彼のように裏でしっかりチームを支える人であることを、象徴的に表す事例でもある。
ジャクソンのリーダーシップとは、どのようなものだったのか。
1981-82年 | レイカーズ | 1996-97年 | ブルズ |
1982-83年 | セブンティシクサーズ | 1997-98年 | ブルズ |
1983-84年 | セルティックス | 1998-99年 | スパーズ |
1984-85年 | レイカーズ | 1999-00年 | レイカーズ |
1985-86年 | セルティックス | 2000-01年 | レイカーズ |
1986-87年 | レイカーズ | 2001-02年 | レイカーズ |
1987-88年 | レイカーズ | 2002-03年 | スパーズ |
1988-89年 | ピストンズ | 2003-04年 | ピストンズ |
1989-90年 | ピストンズ | 2004-05年 | スパーズ |
1990-91年 | ブルズ | 2005-06年 | ヒート |
1991-92年 | ブルズ | 2006-07年 | スパーズ |
1992-93年 | ブルズ | 2007-08年 | セルティックス |
1993-94年 | ロケッツ | 2008-09年 | レイカーズ |
1994-95年 | ロケッツ | 2009-10年 | レイカーズ |
1995-96年 | ブルズ | 2010-11年 | マーベリックス |