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実は……スペインよりイタリア有利?
ユーロ決勝を戦術&戦歴で検証する!
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/07/01 08:02
デルボスケ(右)は「決勝では自分たちのサッカーをやるだけだ。必ず優勝し、新たな歴史を作る」と前人未到のメジャー大会3連勝(ユーロ2008、南アW杯、ユーロ2012)への夢を語っている。「スペインの方が試合経験もサッカーのクオリティでも上だ。だが……私たちは勝てる」と優勝候補のドイツを破り、勢いにのるプランデッリ。
イタリアのドイツを破っての決勝進出は番狂わせだろうか。
大会開幕前まで遡ると、答はイエスだろう。
イタリアは予選を無敗で突破したが、その後、開幕1週間前のロシア戦(0-3)を含む親善試合を3連敗しているし、関与を疑われるクリシートの非招集やボヌッチへの嫌疑という形で、セリエAの八百長スキャンダルの影響を少なからず受けていたからだ。
ところが蓋を開けると、グループステージ初戦のスペイン戦で、イタリアは素晴らしいサッカーを見せた。組織的に高い位置からかけるプレッシャー。先制ゴールを決めた後も、ただリードを守るのではなく、追加点を奪いに行く姿勢。ボールを持つことで能動的に試合を進めようとする意志。
結果は1-1の引き分けだったが、世界一のボールポゼッションを誇るスペインからボールの支配権を奪おうとしたチームは、今大会ではイタリアだけである。
だから、この時点を基に考えると、ドイツ戦勝利もそれほど意外ではなくなる。
スペイン、イタリア両者とも、苦しんで決勝に辿り着いた。
その後イタリアはクロアチアとも1-1で引き分けたが、最終節でアイルランドを2-0で破り、グループCを2位で突破した。
そして準々決勝では中盤の展開力を欠くイングランド相手にボールをコントロールし、35本ものシュートを放った。結局、得点はできなかったものの、PK戦で勝利。晴れて準決勝に進み、ドイツを下すに至ったわけだ。
一方の優勝候補スペインはさすがの決勝進出だが、こちらも楽に勝ち上がってきたわけではない。
問題なしと言えたのはグループリーグ第2節のアイルランド戦と準々決勝フランス戦ぐらいで、イタリア戦では前述のとおりスペインサッカーの最も重要な要素“ボール”を奪われそうになった。
クロアチア戦や準決勝ポルトガル戦では敵の巧みな守備戦術に手を焼いた。特に後者はデルボスケ監督になってからの4年間で最も苦しんだ一戦といえる。
さて、そんなイタリアとスペインが決勝戦で再び相まみえるわけだが、過去の対戦成績からすると、有利なのはイタリアということになる。