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<ナンバーW杯傑作選/'98年7月掲載> ベンゲル、日本の戦いを振り返る。 ~フランスW杯の日本代表戦を分析~
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph bySports Graphic Number
posted2010/05/14 10:30
「ストライカーをどうするかが最大の課題のひとつ」
――そういうものでしょうか。ではフォワード陣はどうでしたか?
「はっきり言って弱かった。ストライカーをどうするかが、2002年に向けての、最大の課題のひとつだ。ただしこれは、一朝一夕に解決する問題ではない。今の若手の中にも、可能性のある人材はいるのだろうが、根本的には12~13歳の子供の頃から育てないと解決しない。日本全体で考えていくべき問題だ」
――岡田監督の采配はどうでしたか?
「よくやったと思う。あの困難な状況から、日本を予選突破させたのは、明らかに岡田監督の功績だ。そして本大会でも、日本らしさを発揮した。ひとつ言いたいのは、3連敗が監督の責任で、彼が責任を取って辞任するのはいい。だがそれで終わりではどうなのだろうか。
新しい監督になっても、恐らくは同じ選手たちが選ばれ続けるのだろうが、敗戦の責任は監督だけでなく選手にもある。選手はそのことを、もっと深刻に受けとめるべきだろう」
「フィジカルは欧米以上。テクニックの強化が必要だ」
――それでは、2002年に向けての課題は何でしょうか?
「ひとつには攻撃力の強化。つまり相手ゴール25mから先で、どうやって崩していくかだ。これはJリーグで1対1の戦いが激しくなっていかない限り、なかなか強くはならないだろう。また日本だけでなくアジア全体にいえることだが、テクニックの強化をもっと図るべきだ。フィジカルもベースだが、日本の場合、フィジカルは欧米と比べて遜色がないどころか、むしろ上回っていた。
例えば日本が、あれだけあったコーナーキックやフリーキックのチャンスを生かせなかったのも、正確なキックを蹴れなかったからだ。センタリングも同じ。受ける相手に合わせ、正しく蹴れなければチャンスは生かせない。スーケルが日本戦で得点できたのも、アサノヴィッチから正確なクロスボールがあがったからだった」
――では方向性としては、今のサッカーを進めていっていいのでしょうか?
「正しい方向に進んでいると思う。コレクティブな戦術をベースにしたサッカーは、世界の流れとも一致している。若手の育成が今後の鍵だが、その点でも日本は可能性に溢れている。2002年には大いに期待できる。今のやり方を、これからも続けるべきだ」