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レアルとアヤックスの「顧客」は誰か?
利益モデルが企業を特徴づける。 

text by

葛山智子

葛山智子Tomoko Katsurayama

PROFILE

photograph byBongarts/Getty Images

posted2012/05/15 10:30

レアルとアヤックスの「顧客」は誰か?利益モデルが企業を特徴づける。<Number Web> photograph by Bongarts/Getty Images

1992年にアヤックスの下部組織に入団したスナイデルは、2012年にトップチームデビュー。5シーズン在籍しゴールを量産した。2007年にレアルへ移籍。2009年にインテルへ移籍後はセリエA5連覇、イタリア史上初の3冠達成に貢献している。

スターバックスとドトールは何が違うのか。

 ここまでレアルとアヤックスを例に利益モデルについてみてきたが、もちろんこうした違いは様々な企業に当てはまる。身近な例としては、スターバックスとドトールが挙げられよう。

 コーヒーを提供するサービスとしては、両社は同じ市場で闘っているように見える。だが、読者はすぐに、客層が違うことに気がつくであろう。

 スターバックスは、ちょっと自分に贅沢なご褒美を送りたい女性を主要なターゲットにしている。一方で、ドトールは、勤務中の商談や休憩に気軽に立ち寄りたい人をメインにしていると考えられる。

 したがってスターバックスには、コーヒー以外にも女性心をくすぐる「ベアリスタ」なるクマのぬいぐるみやミュージックCDも販売されている。また内装も違えば、単価も違う。

 スターバックスはドリップコーヒーが300円からで、高いものだと600円を超える。一方でドトールでは、ブレンドコーヒーが200円、ほとんどの飲み物が400円前後で収まる。気軽に毎日足を運ぶドトールだからこその価格である。この価格帯であれば自然と来店頻度も高まるであろう。

 これらのコーヒーストア業界の事例からもわかるように、「ターゲットを定める」ことは利益モデルを策定する際の基本となるのである。

あなたの会社の利益モデルは何か?

 さて次は、読者の会社の利益モデルも考えてほしい。

 読者の勤める会社も、利益を生み出し、その利益を新たに投資し、またその投資によって利益を出すことが重要で、このサイクルが企業の永続を保証する。したがって企業も利益モデルをしっかり描くことが欠かせない。そして「顧客をどのようにとらえるか」が利益モデルに大きく影響するのである。

 しかも、勝つ利益モデルは1つではなく、様々なパターンがあるから面白い。

「イノベーションのジレンマ」で有名なハーバード大学クリステンセン教授も、イノベーションは製品だけではなく、利益モデルを含めたビジネスモデルでも必要であると説いている。

 利益モデルの再考だけでも社内の変革につながる可能性が大きいと筆者も思う。なぜならこの「利益モデル」の描き方が、今後このコラムでも取り上げる「持続的競争優位性」の確立と密接に結びつくからである。

【次ページ】 利益モデルに必要な2つの視点。

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