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F1序盤の全4戦を徹底分析。
マシンよりチーム戦略で差が出てる!? 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2010/04/27 10:30

F1序盤の全4戦を徹底分析。マシンよりチーム戦略で差が出てる!?<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

中国GPの表彰台に立つ勝者のバトンと2位ハミルトン、3位ロズベルグ。マクラーレンのチーム代表であるマーティン・ウィットマーシュも喜ぶ

開幕フライアウェイ戦での賞賛はすべてクビサのもの!

 あらゆる面でトップ4に敵わないはずなのに、大健闘を見せているのがルノー。

 予選ではトップ10入りスレスレのマシン・パフォーマンスながらクビサのオーストラリアでの2位、マレーシアの4位、中国の5位はいずれも賞賛に値し、開幕フライアウェイ戦の殊勲・敢闘・技能賞はすべてクビサに与えてしかるべき。中国GPでは故国ポーランドで営まれた国家首脳の国葬に捧げる凛とした戦いぶりで、最後までベッテルを前に出さなかった。ぺトロフが初得点を挙げたのも頼もしい。

 また、フォースインディアも侮れぬ速さを随所に発揮し始めている。

 シーズン中は実走行によるテストが禁止されているいまのレギュレーション下では室内開発がキーになるが、プライベートチームの彼らがどうやって時にマクラーレンに匹敵するあの高いトップスピードを具現化しているのか、奇跡としかいいようがない。マレーシアのハミルトンはスリップストリームに入りながら、ついに5位スーティルを抜けなかった。

自らに非の無いリタイヤが続く小林可夢偉。

 最後に小林可夢偉について。開幕から4戦すべて自らにはまったく関係がない理由によるリタイア。オーストラリアに次いで2回目の0周リタイアに終わった中国では「もう、どうしようもない。4戦で20周もしてない。レースしに来てレースできないんでは、何しに来ているか分からない。このあいだ明治神宮にお祓いに行って来たんですが……。伊勢神宮もいいかもしれないですね。でも明治神宮行ったら予選はよかったから、予選は明治、決勝は伊勢ですかね」と、冗談交じりに苦笑するばかり。中国では「完走してたらポイントでしょう」と言っていたが、仮にオープニングラップでもらい事故に遭わなくとも、デ・ラ・ロサと同じく早期のエンジン・トラブルでリタイアしていたことは容易に想像がつく。

 ザウバーの資金不足に起因するだろうメカニカル・トラブルが、一刻も早く解決するのを祈るしかあるまい。主要スポンサーのロゴがなんにもない白とグレーの車体は見るだに寒々しい。

アイスランドの火山の影響がF1界にも深刻な影響を。

 かくて開幕4戦を終え、F1サーカスはヨーロッパへ帰って行った……で、このコラムを書き終えるつもりだった。

 しかし、アイスランド火山噴火による粉塵拡大でヨーロッパの主要空港は閉鎖。日本で開催予定だったオートバイ・レースの“もてぎMotoGP”が中止、10月に延期された。ヨーロッパ系のわが同業者も上海に居残らざるを得ず、同宿のイギリス人メディア関係者が上海市内にビザの延長に出かけて行った。別れしな「スペインGPは開かれると思うかね?」と訊かれたが、オイオイ、そりゃこっちの科白です。

 そういえば中国GPの予選トップ3記者会見で「(アイスランド)火山の影響が出ているが、あなたがたはヨーロッパに帰れるのか?」と質問が出て、アロンソは「もちろん。いつものように帰るさ」とにべもなく返答したのに対し、ベッテルは笑いながら「ああ、ドライブして帰るよ」と言い、ウェバーは「ベッテルに同乗するか、オーストラリアに帰るかだ(注:母国がオーストラリア)」と余裕で応えたが、それを聞きつけたアロンソが実に不機嫌そうな顔で両腕を回してウェバーにこう言ったものだ。

「だったら泳いで帰るんだな」

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