濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
日本のトップが米国で完敗した!!
青木真也が感じた大きすぎる実力差。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2010/04/19 11:30
最後まで「投げなかった」闘いの結果が示すものとは?
会見場の入り口で顔を合わせると、青木は「すっきりしてますよ」と言った。口調はあくまで穏やかで、強がる気配はまったくない。
「フルラウンド、投げずに闘って出た結果ですからね」
確かに、青木は最後まで寝技勝負を挑み続けた。劣勢は明白、このまま“一発逆転”がなければ確実に判定で負けるという試合終盤も、タックル→引き込みという戦法を続けたのだ。一か八かの打ち合いや、苦しまぎれの奇策に走ることはなかった。
ただし、青木が戦法を崩さなかったことは“貫き通した意地”や“最後まで誇りは失わなかった”といった安手の感傷とは違う。それで満足してしまうことこそ、勝負を「投げる」思考にほかならない。
青木は最後まで勝負を投げることなく自分のスタイルを貫き、にもかかわらず結果として負けたのである。
つまり、それだけ実力差があったということだ。
自分よりメレンデスのほうが強かった。自分はメレンデスより弱かった。残酷な現実を心の底から受け止め、強くなる以外に道はないとあらためて思い定めたからこそ、青木は「すっきり」した気持ちで「完敗でした」と言ったのである。