野球善哉BACK NUMBER
ライバル澤村に肩を並べるため――。
中日の2年目左腕、大野雄大の意地。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/02/15 10:31
キャンプでは1日に200球を投げ込んで、今中慎二2軍ピッチングコーチに無理矢理止められた大野雄大。「とにかく開幕1軍で」との言葉通り、スタートダッシュを目指した調整を続ける
「ストレートで勝負できてなんぼのピッチャー」
昨シーズンは故障を考慮されて、キャンプは2軍スタート。故障が癒えると6月末から実戦に復帰した。2軍の日本一を争うファーム日本選手権で先発し、勝利投手となる。1軍でも、勝てば優勝の可能性があった10月14日の巨人戦で初先発(7失点で敗戦投手)するなど大舞台の経験を踏んだ。
そして、この春季キャンプでは1軍入り。
岡田俊哉、小川龍也ら同じ左腕とともに、オリオールズへ移籍したチェンの穴を埋めるべく、競い合っている。
とはいえ、「怪我をする前からすると7割くらい」と本人が話しているように、まだベストパフォーマンスを発揮できるまでには至っていない。キャンプでは、常に、岡田や小川らと同組に入るなど首脳陣の意図は3人を競わせたいのだろうが、彼が見据えるべきものはもっと先にある。
「キャンプが始まったばかりで、この時期でベストピッチができるかといったら、無理なのかもしれない。でも、それを差し引いても、自分のストレートはまだまだだと思います。この1年間の僕の課題はストレートのレベルを高めること。ストレートで勝負できてなんぼのピッチャーやと思うし……とにかくこの1年間、ストレートを磨いていきたい」
コンディションを取り戻し、「澤村にリベンジしたい」。
目指すべきなのは、今季の開幕ローテーションでも、1年間ローテーションを守ることでもない。ベストコンディションを取り戻すことだ。
「大学時代のいい時なら、僕のストレートは澤村に負けていないって自信がありました。でも、去年の終盤に投げ合った時は完全に負けていましたね。もちろん、負けていたのはストレートだけじゃなかったんですけど、悔しいですね。澤村にリベンジしたいっていう気持ちが強くある」
11日の試合では2イニング目の最後をストレートで三振に斬って取った。やはり、この男はストレートで生きる男なのだと再確認したが、その一方、マウンド上で打球を追う弱気な一面を見せるなど、まだまだ彼らしさは出ていないように見えた。
「大野雄大のストレートを打ってみろ!」
彼の背中がそう言い始めた時、大野は真の復活を遂げる。