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木村沙織のエースとしての自覚が、
W杯で全日本女子を「ひとつ」に。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2011/12/06 10:30
最終日に強豪アメリカを破り、主将の荒木絵里香(左)と抱き合う木村。日本は4位に終わったが、木村が数々の窮地を救い、最後まで五輪へ希望を捨てなかった
テクニックや駆け引きでも示したエースの存在感。
木村は、大会が終わったあと、笑顔でこう語った。
「最初はチームがひとつになれていませんでしたが、大会を通じて一致団結していったのがわかりました」
その要因となり、若手が活躍できる土壌が築かれていったのには、木村の姿勢があったように思える。
木村の変化は、メンタル的なものばかりではない。
最終戦でのアメリカとの試合で、2枚ブロックがついてきたと見ると、リバウンドを一度取り、次のスパイクで決めた場面。手のひらをうまく返し、思い切りインナーに打ち込んだ場面。
技術や駆け引きにおいても、以前と比べれば、進化したプレーを見せた。まさに、エースとしての存在感を示したのだ。
来年5月の世界最終予選にロンドン行きをかける。
チームスポーツは、誰か個人が活躍すれば勝てるというわけではない。木村の言うように、チームのまとまりも大切だし、すべての選手の頑張りも重要である。
とはいえ、それらが生まれるためには、チームに求心力があるかどうかもポイントとなる。チーム全員が共通に理解する戦術が求心力になることもあるし、皆が頼ることのできる存在もまた、求心力になり得る。
全日本女子は、来年5月に予定される世界最終予選兼アジア大陸予選に、ロンドン行きをかける。
五輪出場の切符をまず獲得し、獲得後には本大会でのメダルへと向かっていくことになる。そのためには、全日本女子は、さらに成長していかなければならない。
そしてエース木村沙織の充実は、チームの今後にとっても大きい。そう感じさせたのが、今回のワールドカップだった。