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密着取材を通して描かれた
石川遼の素顔とギャップ。
~『石川遼、20歳』刊行秘話~
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph bySports Graphic Number
posted2011/12/03 08:00
『石川遼、20歳』 柳沢英俊著 日本テレビ 1143円+税
「生身の石川遼をより浮き立たせる」執筆方法。
「彼に『どんな選手になりたいか』と聞いた時、『凄い選手になりたい』と答えたんです。上手いでも、強いでも、勝てるでもなく“凄い”選手なんだと。その想いは土壇場でも強気に攻め続けて信じられないプレーを生み出す原動力にもなっているはず。だから僕はその“凄さ”を伝えたいと常に思っています」
一方、本書ではゴルフ場では見せない等身大の石川遼の姿が、両親やキャディーの加藤大幸さん、恩師などを通じても描かれる。プロデューサーとして本の制作に携わった将口真明は石川遼という「強い素材」に対峙する著者の立場を鮮明にすることを求めた。
「一人の書き手として、自分しか書けないことを書く、ということを常に意識してほしいと言い続けました。これは石川遼というゴルファーの単なるノンフィクションではない。取材者の感情や取材対象に必死に寄っている姿を書くことで生身の石川遼をより浮き立たせることができるのではないかと考えました」
その試みは見事に成功していると言えるだろう。柳沢自身も「この出会いは一生モノ」だと感じている。実際、石川遼から去年、「担当をやるなら30年から40年は代わらないでください」と言われた。
あと35年。55歳となった石川遼を想像すると――。
「絶対にプレイヤーですね。僕のイメージの中では石川遼はゴルフを語る人でも教える人でもなく、プレーする人。そこは貫き続けると思います」