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密着取材を通して描かれた
石川遼の素顔とギャップ。
~『石川遼、20歳』刊行秘話~
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph bySports Graphic Number
posted2011/12/03 08:00
『石川遼、20歳』 柳沢英俊著 日本テレビ 1143円+税
大人顔負けの実力と言動でゴルフ界の記録を次々に塗り替えてきた青年が遂に“大人”となった。その誕生日に刊行された『石川遼、20歳』は、石川遼の信念と素顔が綴られていると同時に、著者である柳沢英俊(日本テレビ・スポーツ局)の取材密着記録にもなっている。
15歳の少年が男子ゴルフ史上最年少優勝を飾った2007年5月20日、入社2年目の新米ADだった柳沢は、その価値に気がついていなかったという。
「正直、プロゴルフって高校生で優勝できるんだ、くらいの感覚でしたね。でも、これはギネスものだという話で社内が騒然となり、僕がスポーツ局に配属されて10カ月で初めてゴルフがトップ項目として扱われた。自局のニュースを見て初めて、これは大ごとだぞと認識しました」
大騒動を半ば他人事だと思っていた柳沢は2日後、優勝会見の取材を命じられる。これが石川遼との出会いの第一歩となった。
石川との距離を縮めてもなお「毎試合取材し続ける」理由。
「ゴルフのプレー経験も知識もない自分に何が出来るか必死で考えました。最初の半年はまともに会話すら出来ませんでしたが……」
その中で実行したのが自らもゴルフを始めること、囲み取材で他の記者がしなかった質問を一つでもぶつけること、編集したVTRを手紙とともに両親の元に送り届けること。記者として「当たり前のこと」をやり続けた結果、1年後、単独取材をする機会を得た。
「自宅で取材させていただいたのですが、私服姿で見せた遼君の笑顔が忘れられません。“ハニカミ”ではなく、まさに陽気で無邪気な感じ。ゴルファーとしてのストイックな雰囲気とのギャップに驚くと同時に、やっぱり今どきの高校生なんだとほっとしたのを覚えています」
このやりとりを機に徐々に石川遼との距離を縮めていった柳沢だが、4年以上毎日のように顔を合わせている今もなお、「心を掴めた」などと思ったことはない。
「人って見えないものでつながっているから、一瞬で関係が消えてしまうこともある。それに僕はまだ石川遼をわかったなんてとても言えない。だからこそ、毎試合取材し続けるんです」
そんな柳沢が石川遼という選手を伝える際に心がけていることは何か。