日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
日本代表が北朝鮮に辛勝した内幕と、
明日のウズベク戦に待ちうける罠。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoya Sanuki
posted2011/09/05 11:25
アディショナルタイムは5分。吉田が、清武の右サイドからあげたクロスに合わせてヘディングシュートを決めた時間は後半49分。写真は、歓喜の吉田にチームメイトが駆け寄ったシーン
あまりに劇的な勝利だった。
満員に膨れ上がった埼玉スタジアム2002が揺れた。
「ショートコーナーで相手はボールウオッチャーになっていたので、敢えてニアには飛び込みませんでした」
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試合終了直前の94分。右サイドの清武弘嗣から送られたクロスに中央でフリーとなっていた吉田麻也がヘディングで合わせて、決勝ゴールを挙げた。吉田の冷静な判断も活きて、貴重な勝ち点3を奪ってのスタートとなった。
ブラジルW杯アジア地区3次予選の初戦。ガチガチに守備を固めてきた北朝鮮の組織的な守備に苦しみ、結果だけみれば薄氷の勝利だった。だが、内容自体は日本が圧倒していた。積極的にファイトもしていたし、中央で崩すのが難しいと判断すればサイドから揺さぶりもかけた。相手はほとんど攻めにこないため、守備でピンチになった場面はほとんどなかった。いつゴールが入ってもおかしくはない時間帯が続いていた。
つまりは20本のシュートを放って1本しか入らなかったフィニッシュの精度の低さが苦戦した要因のひとつ。ことごとくバーに当たった不運はあったにせよ、最近のチームの充実ぶりからすれば“らしく”なかった。
スピードアップできなかった日本代表に、本田不在の影響が……。
アルベルト・ザッケローニは試合後、「勝利は当然の結果」としながらも「(日本は)我慢して冷静さを失わず、ボールを回して、中であったり外であったりを突いていたが、(プレーの)精度とスピードにやや問題はあったように思う」と問題点を挙げた。
中3日となるアウェーのウズベキスタン戦に向けて、気になるのがザッケローニが指摘するこの「スピード」の問題だ。
いつもならスピードアップできるところで、それができなかった。ここは本田圭佑の不在とも関係してくる。
本田が“受け手”となって相手を引き寄せ、そこから香川真司や岡崎慎司らがスペースに出て本田からボールを受け取って相手陣営に迫るというのがひとつの攻撃パターンだった。しかし、本田がいないために「経由地」からスピードアップできなかった。
1トップの李忠成が体を張って奮闘するのだが、くさびに入ってくるところをことごとく中を固めた北朝鮮に狙われ、前線で簡単には収まらなかった。