野球善哉BACK NUMBER
阪神タイガースを明るくする男。
~CS進出は鳥谷敬の出来次第~
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2009/09/28 13:00
そう感じずにはいられなかった。いや、そう思いたかっただけなのかもしれない。
9月16日の対巨人戦。阪神先発の岩田が崩れ、乱打戦となった試合で勝利に貢献。彼の務めている打順が3番であることを考慮に入れると当然の仕事かもしれないが、5回表に3点ビハインドからの同点本塁打、7回表には試合を決める勝ち越し本塁打を放ったのだ。
これからの阪神は鳥谷敬の存在感で決まる――。
歓喜に沸く応援スタンドも思っているだろう、そう感じずにはいられなかった。
2003年ドラフト。鳥谷は鳴り物入りで阪神へ入団。
そもそも、鳥谷の阪神入りには大きな期待がかけられていた。'03年の自由獲得枠で阪神入りが決まった鳥谷は、当時のドラフトの目玉だった。東京六大学で三冠王を獲得したスターの入団先が、神宮に本拠地を置くヤクルトでもなく、在京球団の巨人でもなく、阪神であったことは少なからず衝撃があった。それこそ、複数球団による獲得合戦の末に巨人入りした高橋由伸ほどの注目度があったといっても言い過ぎではない。そして、プロ入り直後の注目度も、「ヨシノブ」級に盛り上がっていた。
それにこたえるかのように、鳥谷は1年目からレギュラーを獲得した。だが、見方を変えると、実績に先行した形でのレギュラー獲得であったのも、また紛れもない事実であった。その後の彼の貢献がどの程度であったかは、過去の成績を見れば分かる。
「ヨシノブ」ほどではなかったのだ。
真弓監督の采配が、鳥谷を確実に成長させてきた。
とはいえ、ここ数年の鳥谷のパフォーマンスは年を経るごとに成長の跡を見せている。ストップウオッチを手にすれば、俊足といわれる好タイムを記録するし、彼の好守備によって流れを変えたゲームをいくつか見た。バッティングも広角に力強い打球が増え、今年は初めて20本塁打を記録しそうな勢いである。
昨年にはついにベストナインを初受賞。セ・リーグを代表する遊撃手といえば井端弘和(中日)だが、鳥谷はその座を脅かす存在になってきたのだ。
ただ、今シーズンに就任した真弓新監督の鳥谷の起用法が、彼を成長させたということも見逃してはいけない。