今こそモータースポーツBACK NUMBER
佐藤琢磨がついにIRL参戦表明。
F1レーサーはインディで通用する?
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byShiro Miyake
posted2010/02/22 10:30
2月18日、東京・南青山にてIRL参戦についての記者会見をした佐藤琢磨。会見中は始終明るい笑顔で、レーシング・シートに座れる喜びを溢れさせていた
インディでの問題はオーバルコースと高速時のクラッシュ!
問題は、初体験のオーバルコースの特殊性である。F1ドライバーが手を焼くのがこれで、マンセルなども渡米早々ひどいクラッシュをしている。そして300km/hオーバーのクラッシュは時にただでは済まない決定的ダメージをドライバーに与える時がある。
F1で3回もタイトルを奪って引退した後、一発勝負でインディ500に挑んだネルソン・ピケでさえも大クラッシュしている。地元の病院で大手術を受けて一命は取りとめたが、これが元で結局選手生命を断たれている。走りがアグレッシブであればあるほどその代償も大きく、そうかといって引け腰では“500”では勝てず、その辺の見極めが実に難しい。
先に挙げた高木虎之介はツインリンクもてぎで行われたインディ・ジャパンの練習中にウォールにクラッシュ! その時のインパクトは数十Gにものぼったという(G=重量加速度。50Gなら一瞬のうちに自体重の50倍の重さが身体にかかる)。昨年、別件でインタビューした時「(もてぎのクラッシュでは衝撃で)ヘルメットが割れてしまったからね。いまでも頭が痛いことがある」と語っていた。ちなみに高木は佐藤琢磨のSRS(鈴鹿レーシングスクール)受講時、その講師のひとりだった。
5月30日のインディアナポリスで琢磨の実力が発揮されるか?
常々“アタックなしにはチャンスなし”と公言している佐藤琢磨のとりあえずの壁は、オーバルコースに臨むにあたってのセルフコントロール。オーバルについて琢磨が「単独走行では問題ないと思うが、380km/hでの他車とのバトルは初めての経験。ジミー(チームオーナーのバッサー氏)にアドバイスを受けながら少しずつスピードを上げて行きたい」と慎重な構えを見せれば、かつてインディシリーズでチャンピオン経験もあるバッサーも「オーバル攻略で大事なのは自信と忍耐。このコンビネーションがうまく行けばインディ500でも勝てるだろう」と琢磨にエールを送った。オーバルという壁に向かってそれを乗り越え、その壁と対話ができるようになった暁には、日本人初のインディ500ウイナー誕生も夢ではないはずだ。
インディアナポリス・モータースピードウェイは2004年、佐藤琢磨がF1で3位表彰台に上がったゲンのいいコース。F1と“500”ではレイアウトが違うとはいえ、今年5月30日のインディ決勝がいまから楽しみである。