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冬の移籍戦線を追え。 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byYUTAKA/AFRO SPORT

posted2009/01/28 00:00

冬の移籍戦線を追え。<Number Web> photograph by YUTAKA/AFRO SPORT

 6週間半続いたウインターブレークも終わり、30~31日からリーグ後半戦がスタートする。直前の27~28日にはDFBカップのベスト16戦が行なわれ、各チームがどのように前半戦を反省し、戦略を練り直したかが判明してくる。冬の中休みはチーム作りで重要な意味を持つ。1月の1か月間に限って移籍が認められ、弱点の補強を図れるからである。補強とはつまり移籍。新聞には連日、移籍に関する情報が真偽を問わず掲載されていた。

 『GKヒルデブラント、ホッフェンハイムへ』。フムフム、そうか。ようやくブンデスリーガに復帰したのか。なになに、「バレンシアは滅茶苦茶だったよ。監督が4人、会長が3人、クビになっても居座る選手が3人もいた」だって? どういう構図か想像しただけで笑っちゃうけど、そりゃ苦労しましたな。で、耐えきれずに出戻りというわけですか。「給料が激減してもプレーしたかった」とは泣かせる、というか、改めてラテンの国のいい加減さを知った思いがする。

 『ジエゴが移籍』って本当かよ。スクープ記事かと思いきや、横に小さく「来季のCL出場権を失ったら」の但し書きが付いている。もっと大きな文字を使えよ(怒)。まぁ、実際彼はブレーメンを辞めたほうがいいけどね。すっかり目利きの衰えたGMやら、予算規模が拡大しない経営体質が続く限り、あのチームに壮大な夢を期待しても無理というものだ。『レアル・マドリードのGMは難色示す』であれば、行き先はアトレチコ、ユベントス、インテルあたりかな。

 『ゴメスに35億円は払えない。ベッケンバウアーが断言』は見出しで買わせる常套手段だ。「経済危機下ではそんな値段は出せない」ともっともらしいことを仰る皇帝ですが、きっと他チームに対する牽制でしょうね。裏側でこっそりと取引を進めているんじゃないですか? クローゼの時みたいに。

 『ポドルスキー、シーズン終了後に故郷に帰る』。よかったねぇ。バイエルンではついにレギュラーを確保できなかったけど、今夏、古巣のケルンに戻ることが決定した。あれだけのタレントを飼殺しにする意味はない。もっとリーグでブレークしてほしい。ついでに次々と主力を引き抜いてはライバルチームを骨抜きにするバイエルンの戦略に仕返しをしてやれよ……って、立場上はまだ契約下だから微妙なこと言えないけど。

 『シュツットガルト、19歳の天才MFを2億8000万円で獲得』には胸騒ぎを覚えた。2部所属ながら、U-19ドイツ代表の有望株だそうだ。名前はティモ・ゲプハルトか。メモしておこうっと。ところでトニ・クロスはどうしてるんだ?

 『シャルケ、移籍組7人は全員期待外れ。20億円の無駄遣い』には驚かない。毎度おなじみのお家芸である。スカウト3人の目は揃って節穴、移籍の全てが代理人任せというのはいかがなものか。“親分子分”的な義理人情によって人事と組織が動くのを見るにつけ、シャルケの“へたれ”は当分改善されないだろう。

 夏とは比べ物にならないほど地味な冬の移籍マーケット。新加入した選手がチーム力を一気に底上げ、というわけにはいかないものの、やはり後半戦への楽しみが一つ増えることに違いはない。注目すべきはホッフェンハイムとバイエルンである。この両チーム、冬の移籍ではほとんど動かなかった。ホッフェンハイムがヒルデブラントを、バイエルンがアメリカからドノバンを3月末までの期間限定の短期レンタルで獲得したのが唯一の移籍劇だったのだ。

 状況から判断すると、後半戦はバイエルン有利に動くのではなかろうか。というのもつい最近、ホッフェンハイムは得点王のイビセビッチが練習試合で十字靱帯を負傷してしまい、31日の試合に欠場が決定、経過次第ではさらに長引くことが懸念されているからである。ホッフェンハイムの当面の相手はコットブス、ボルシアMGと下位2チームなのが救いだが、いずれにせよ総得点42のうち、一人でその6割に当たる18点を挙げているイビセビッチが抜けた穴は大いに気になるところである。『イビセビッチの欠場でリーグ優勝は無理になったか?』とマスコミが緊急アンケートをとったところ、64%が「無理」と答えたが、それほど彼の存在は絶大なのだ。

 対するバイエルンは先週の練習試合で、リベリー、ポドルスキー、ゼ・ロベルト、ルシオ抜きで戦いながらも、2部リーグで首位を走るマインツを5-0で粉砕。このうち2点をドノバンがあげるなど絶好調である。ドノバンはこれまでの練習試合で5試合計236分に出場、4点3アシストの大活躍だ。トニとクローゼのどちらかが欠場しても、バイエルンにはポドルスキーがいるし、それにドノバンがジョーカーとして生きてくる。これは強みである。

 27日にカップ戦を戦うバイエルンは中2日の強行日程でリーグ戦へと突入、シーズンは佳境に入っていく。思わぬ伏兵、ヒーローが現れ、サプライズが起こるのがブンデスリーガだ。これまではホッフェンハイムに集中していたが、ファンは次に続くチームを探しているに違いない。次に活躍するのは「どの番だ?」と……。

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