プロ野球亭日乗BACK NUMBER
情報を活用できる球団か否か?
~中日は“企業努力”で打率アップ~
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySPORTS NIPPON
posted2009/08/14 11:30
65年に広島に入団した外木場は、75年には20勝を挙げ優勝に貢献し、最多勝、最多奪三振、沢村賞のタイトルを獲得。その後は右肩の故障に苦しみ、79年にチームが初の日本一に輝いたのを機に現役引退
中日の強力打線を支援する解析スタッフの情報力。
クセを巡っては、昨年こんな話があった。
阪神のアッチソンはスライダーを投げるときにクセが出ていた。セ・リーグのほとんどの球団はそのクセを解析していたが当の阪神だけは気づかず、シーズン終盤の大事な場面でこれでもかとアッチソンを中継ぎで投入。手痛い場面で打たれて何度も黒星を喫して、あの屈辱の逆転劇につながったというのだ。
そしてこの解析技術が最も進んでいるのは中日だといわれている。
いまはコンピューター画像を使った動作解析はかなり進歩している。これまでは単純に投手がストレートを投げるときと変化球を投げるときの映像を見比べて、違いを探していたが、中日ではこの2つの映像を二重に重ねて見ることもできるようになっている。そうなると球種によってのフォームの違いは一目瞭然。今まで気づかなかった微妙な違いも次々と明らかになっているという。
こうした裏方の技術も中日の強力打線を支える一つの要素となっている。その事実は見逃すことのできないものだった。
情報分析は近代野球に不可欠だが……。
「クセ盗みは選手の技術的な進歩を阻害する」――最近の高度な情報戦に対して、一部のOBの間ではこんな声があるのも事実だ。
ただ、スパイ行為とは違い、公にさらされている情報をいかに利用して活用するかは、近代野球では勝利への不可欠な要素だといえるだろう。そういう点ではクセを利用することも勝つことへの一つの必要手段であり、球団としての“企業努力”となるはずだ。
もちろんクセを知ることがプラスばかりに作用するとは限らない。中にはクセを知るとそればかりが気になって打てなくなると嫌う選手もいる。クセを瞬時に見分けてうまく結果に結び付けられること――すなわちこれもまたプロの技術ということになるのだ。