青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER

ドライバーを封印した石川が、
全英オープンで得たもの。 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byGetty Images

posted2009/07/23 11:30

ドライバーを封印した石川が、全英オープンで得たもの。<Number Web> photograph by Getty Images

 これまで見せたことのない「手堅さ」といつも通りの「らしさ」を見せて、石川遼の2度目のメジャー挑戦が終わった。

 スコットランドのターンベリーで行われた全英オープン。タイガー・ウッズとの同組対決が実現したこともあり、日本の盛り上がりは4月のマスターズ以上と言えるほどだった。

注目の第1打はアイアンでのティーショットだった。

 注目のスタートホールで石川は意外にも3番アイアンを手にした。続く2番ホールもアイアンで、得意のドライバーを抜いたのは3番ホールになってから。ドライバーでリズムをつくっていく石川にとっては珍しく手堅い戦略をとった。

「失敗しなかったからよかったけど、なかなか違和感のあるスタートでした。2日目の1番は5番アイアンで打ったし、ショートホールから始まるような感じで打っていかなきゃいけなかった」

 今大会はターンベリーで24年のキャディー歴をもつリー・マッカランさんを起用した。コース内を巡る風やどこまでも転がっていく硬いフェアウエーなど勝手の分からぬリンクスにあって、クラブ選択はマッカランさんに一任した。それゆえのアイアンでのティーショットだった。

 ウッズをはじめとして1番ホールでドライバーを使う選手は皆無で、ポリシーに反していたとはいえセオリーに反した攻め方ではない。「これも経験していかなきゃいけないこと。アイアンでティーショットを打つべきホールが海外にはあるんだな」と石川も素直に納得はしていた。

大胆なドライバーショットで見えた石川らしさ。

 一方で無謀とも思えるほど大胆にドライバーを振るった場面もあった。そして、そちらのほうが満足できたというのが石川らしいところだった。

 練習ラウンドから絶対にドライバーは使わないと決めていた距離の短い13番パー4。初日はアイアンだったが、予選通過の懸かった2日目はマッカランさんからドライバーが差し出された。

「ここはドライバーで打っていいよと言ってくれたんです。しっかり集中するんだぞと言われて、そこで集中していいショットが打てた。あの1打は自分にとってものすごく大きかった。僕の姿勢を分かってくれたキャディーさんにも感謝したいですね」

 この時の石川は直前の3ホールでスコアを4つ落とし、カットラインが目前に迫っていた。悪い流れを変えられるとしたらドライバーでのナイスショット。1週間以上行動をともにしてきたマッカランさんは、石川という選手の特性をきちんと見抜いていたのかもしれない。

 メジャーの舞台で追いつめられた状況の中、何よりも力を注いできたクラブをきちんと打つことができた。良し悪しは別にして、石川らしさにあふれたクラブ選択。結果的にはボギーにつながったものの、スイング改造直後のマスターズでは得られなかったショットへの手応えは残った。

予選落ちだが「マスターズよりも有意義な1週間だった」。

 2度目のメジャー挑戦も結果は同じ予選落ち。しかし、今大会を「マスターズよりも有意義な1週間だった」と言えるものにしたのは、自ら定めたセオリーさえ突き破ったドライバーショットだった。

「ティーショットをレイアップする経験を積んできたけど、日本では簡単にレイアップするつもりはない。あくまでも、どんなに狭いところでもドライバーで打っていきたい気持ちは変わらない」

 リンクスで見せた手堅い一面はひとまず引き出しの中にしまっておいて、石川はいましばらくポリシーを貫いてドライバーを振り続ける。

石川遼

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