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ナポリの「欧州戦線奪回作戦」。
智将マッツァーリの掛ける“魔法”。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byUniphoto Press

posted2009/11/30 10:30

ナポリの「欧州戦線奪回作戦」。智将マッツァーリの掛ける“魔法”。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

48歳のマッツァーリ監督。くすぶっていた選手を開眼させる手腕は見事だ

厳格さと寛大さの“飴とムチ”で人心掌握を。

 監督としてのキャリアをスタートさせた4部時代からビデオで日夜戦術研究を欠かさない理論派。ひとたびターゲットを設定するや完遂まで気を緩めない厳格な指揮官だが、一方で情にも篤く、サンプドリアでも、そしてナポリでも人心掌握に成功した。

 10月中旬の就任直後、問題児FWラベッシがアルゼンチン代表戦の後、南米から戻る際にパスポートを紛失し再合流が遅れた。クラブ側は激怒し懲罰を与えようとしたが、マッツァーリは「優先すべきは試合」と不問にし、ラベッシを先発起用した。彼はクラブのアイドルに懐の深さを見せることで、デニスやクアリアレッラら、才能はあるものの一癖も二癖もある他のFWたちに、「話のわかる監督だ」というイメージを植え付けた。飴とムチの使い分け。その求心力によって、今では指揮官こだわりの3バックをベースに、全ポジションの選手たちが伸び伸びとプレーしている。

サポーターへのXマスプレゼントは欧州カップ戦出場だ。

 首位を走るインテルはともかく、今季のセリエA上位には、サンプドリアやパルマなど新鮮な顔ぶれが並んでいる。近年まれに見る混戦の理由は、ミランやユーベの弱体化に乗じた地方クラブが、図太さをもってビッグクラブへ果敢に挑んでいる結果だ。その筆頭的存在が、ナポリ。マラドーナ時代から、ビッグクラブへの反逆児としてつねに異彩を放ってきたが、再びその強烈な存在感を示し始めた。

「今のチームは“3つのC”から成り立っている。Cuore(=ハート)、Cervello(=頭脳)、そしてCogl……(=会長は自粛するも、Coglione=金玉。俗語で根性の意)の3つだ。来季は何としてでも欧州カップ戦(UEFAヨーロッパリーグ)に出る!」

 現在の好調ぶりに、大衆ウケする発言に事欠かないデ・ラウレンティス会長の口も一層滑らかだ。彼が牛耳るイタリア映画界ではこの時期になると、例年正月映画よろしく“クリスマスもの”が封切られる。チームにとってさしあたっての目標は、欧州カップ戦出場圏内である6位の年内奪取。ナポリ・サポーターにとってハッピーなクリスマスになるかどうかは、マッツァーリの双肩にかかっている。

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