ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
バイエルンが手に入れた翼。
~ロッベン、衝撃のデビュー~
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byUniphoto Press
posted2009/09/18 11:30
ロッベンは加入早々、リベリーとの黄金コンビを結成。バイエルンは好調の波に乗った
ベッケンバウアー会長も絶賛するバイエルンの両翼。
これまでブンデスリーガのFWたちを苦しめてきたバルザーリとベナーリオを、ロッベンは軽くあしらってしまった。
ヴォルフスブルクの二人がうなだれる傍らで、ロッベンとリベリーが抱擁をかわす。そのコントラストが、闇にうかぶ芝生の上で、ひときわ輝いて見えた。バイエルン・ファンのプライドをくすぐる名シーンが生まれた瞬間だった。
こうして、ロッベンとリベリーが両翼を担い、ゴメスが中央でかまえる強力な3トップが完成した。ベッケンバウアー会長は誇らしげだ。
「このグルーヴ感、そしてスピード。ロッベンとリベリーのようなコンビは、見たことがないね。バイエルンの両ウイングはヨーロッパ最高のレベルにある」
バイエルンはヨーロッパの舞台で羽ばたく翼を手に入れた。そうベッケンバウアー会長が断言したくなるほど、リベリーとロッベンのスピードは圧倒的だった。
ドイツ語の挨拶で締めくくった「完璧な夜」。
試合のあと、ロッベンの入団会見が行なわれた。付き添っていた広報部長が断りをいれる。
「ロッベンはまだドイツ語を話せません。英語での会見といたしますが、よろしいですか?」
記者たちが期待の面持ちで見つめるなか、ヒーローは流暢な英語で感想を述べていく。
「今日は特別な夜になったよ。リベリーともうまくやれたしね。ただ、まだ勝ち点3を稼いだだけだ。これからの数試合が大事になってくる」
初めて戦ったブンデスリーガの感想を、ロッベンはリラックスした表情で語った。その後は、質疑応答。記者との矢継ぎ早のやりとりで、あっという間に時間は過ぎていった。そして、最後の質問が投げかけられた。
「ところで、もう覚えたドイツ語ってあります?」
「うーん……」とロッベンは表情を曇らせた。それでも、記者は食い下がる。
「何か、ひとつでいいんで……」
ロッベンは、試合で見せたプレーと同様に鋭く切り返した。
「Auf Wiedersehen」
はにかみながら、かすかに笑みを浮かべながら、ドイツ語を披露した。アウフビーダーゼーン──さようなら、という意味である。
記者たちの笑い声が響き渡り、その余韻の中でロッベンは会場を後にする。ロッベンの完璧な夜はこうして幕を下ろしたのだった。