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バイエルンが手に入れた翼。
~ロッベン、衝撃のデビュー~
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byUniphoto Press
posted2009/09/18 11:30
ロッベンは加入早々、リベリーとの黄金コンビを結成。バイエルンは好調の波に乗った
開幕から2分1敗と、迷走を続けていたバイエルンの焦りが垣間見えるタイミングだった。アリエン・ロッベンがやって来たのは、移籍市場が閉まる4日前であり、昨季王者ヴォルフスブルクをホームに迎える前日のことである。
それでも、レアル・マドリーからやってきたスター選手のコメントは、重要な一戦を前にドイツ中をかけめぐっていた。
「伝統あるクラブの一員になれて嬉しいよ。ここでは、とても歓迎されていると感じるんだ」
試合が始まる直前、ベンチの前では群れをなしたフォトグラファーが、ひっきりなしにフラッシュをたいている。レンズの先にいるのは、ベンチスタートとなったロッベンだ。普段はピッチへと降り注ぐフラッシュが、ピッチ脇へ放たれている。メディアの期待は試合前から高まっていた。
対照的だったのは、ファンの反応だ。試合前には「ロッベン・コール」を耳にすることさえなかった。試合が始まってからも、ファンの関心は昨季王者との試合の行方に注がれていた。ロッベンの存在は忘れ去られているかのように見えた。
ロッベンのシュートでスタジアムは総立ちに。
ところが、前半を1点リードで折り返し、後半開始からロッベンがピッチに立つと、それまでの無関心が嘘であるかのようにファンの反応が“聞こえて”きた。ロッベンが少しドリブルをするだけで、3階建てのスタンドからは拍手の音が降ってくる。
後半の23分だった。バイエルンのカウンターからチャンスが訪れる。前方には大きなスペースが広がっている。ハーフウェイラインを越えたところでリベリーからのボールを受けたロッベンが、ドリブルを始めた。
その瞬間、興奮したファンは立ちあがっていた。
スピード感が違う。ロッベンはスピードを落とすことなくペナルティエリアに進入して、そのままシュート。移籍後初ゴールは、相手選手だけでなく、味方をも置き去りにしたスピードによって生み出された。ファンへの挨拶代わりとしては十分すぎる一撃となった。
さらに、12分後のことだ。またもやカウンターのチャンスだ。ハーフウェイライン付近で今度はロッベンが、右に開いたリベリーへとパスを出した。リベリーがスピードに乗ったドリブルで一気にゴールへ突き進み、ペナルティエリアにさしかかる直前で左へパスをつなぐ。ボールを受けたロッベンは、左足で内側へ切り返す。ロッベンの利き足である左足のシュートを警戒していたヴォルフスブルクのDFバルザーリとGKベナーリオは、尻もちをついてしまう。ロッベンはボールを右足で流し込むだけでよかった。