セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER
八百長まがいのローマダービー。
text by
酒巻陽子Yoko Sakamaki
photograph byGetty Images/AFLO
posted2005/05/24 00:00
0−0のドローに終わった5月15日のローマ−ラツィオ戦。引き分け狙いの消極的な試合内容は今季セリエAの「ワースト1」とメディアに叩かれた。オリンピックスタジアムの7万人を越える大観衆も逆上。
「Ma che semo venuti a fa' (なにをしに来たんだ!)」「ブッフォーニ(いいかげんなやつら)」
犬猿の仲とされる両クラブのサポーターたちもこの日だけは「腹立ち」という点で一体化した。
激しい戦いを繰り広げてきたローマダービーは、「現代のグラディエーター(剣闘士)によるスペクタクル」と呼ばれ、セリエAの醍醐味が味わえると常に観衆を虜にしてきた。しかしながら、この度は八百長試合ともいえる形で観る者の信用を落としたてしまった。
「あってはならないダービー戦」に至った理由を考えてみたい。
36節を終了した時点でのローマ、ラツィオの順位を見ればわかるように、かつてリーグを制覇したこともある両クラブは、セリエA残留争いという厳しい局面に立たされている。ラツィオはリーグ3連敗中。ローマに至っては、ダービーまでのリーグ戦10試合で獲得した勝ち点はわずか2ポイント。豊富な戦力を活用できず、試合に勝てないという不安に陥っている。
更にその後の日程、つまりダービー戦後の対戦カードがローマとラツィオを震え上がらせた。
ラツィオは、フィオレンティーナと格上のパレルモ。ローマが対戦するアタランタ、キエボもセリエB降格の危機をむかえているクラブだけに、苦戦を強いられる可能性は多いにある。
勝ち星を挙げることよりも、これ以上の黒星が許されない両チームにとって、ダービーは絶対に負けられない試合だったのだ。
かくして、チームにとっては引き分けは満足できる結果であり、安心してポイントを稼ぐことは、戦いに怖気づいた選手達にとって当然の対応策だった。つまり、ケガというリスクを冒すことなく、その日、勝ち点1を得ることは、会心のゴールより価値があったというわけである。
しかし、この「狙い通りの引き分け」を、ローマ、ラツィオを支持してきたサポーターに対してどう説明するかという問題が残る。
「真剣勝負ができなくて、なにがプロだ」と発狂するサポーター対して、それぞれの選手達は次節の必勝を誓い、信用回復に努めた。
再生の道は八百長試合では決してない。一度は頂点を極めた両クラブだけに、いかなる試合でも全力を尽くして戦うことを選手たちは肝に銘じて欲しい。なぜなら、セリエAの真髄とはエネルギッシュな攻防にあるのだから。
(その後5月22日、ラツィオはフィオレンティーナとドロー、ローマはアタランタに勝利した)