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先発転向の巨人・山口鉄也。
成否を握る“マイナス思考”。 

text by

鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNaoya Sanuki

posted2010/02/25 10:30

先発転向の巨人・山口鉄也。成否を握る“マイナス思考”。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

昨季は73試合に登板し、防御率1.27、 9勝1敗4セーブ35ホールドを挙げ「最優秀中継ぎ投手」のタイトルを獲得。契約更改では育成出身選手として初の年俸1億円を達成した

“マイナス思考”の山口は登板間隔の長い先発には不向き?

 もちろん先発投手としてのピッチングの違いは試合で投げて、実戦で徐々にペースをつかんでいくしかない。ただ、それ以上に、周囲が心配するのが先発になったことでのメンタル面の変化だった。

「中継ぎのときはいつ出番が回ってくるか分からないのが、彼には逆に良かった」

 あるOB評論家の危惧だ。

「ただ先発は次の登板が決まっていて、そこまで時間がある。肉体的には疲労をとって、調整時間が十二分にあるわけだけど、メンタル面ではそれだけ考える時間があるということ。山口のようなマイナス思考の選手には、それがむしろプレッシャーになりかねない」

 毎日、毎日、いつ出番が回ってくるか分からない中継ぎでは、マウンドにあがる“ドキドキ感”は一瞬だ。しかも失敗しても、早ければ翌日にはその失敗を取り戻せるチャンスが巡ってくる。

 しかし、先発はそうはいかない。次の登板は約1週間後にしか巡ってこない。その間にうまく気持ちをコントロールできればいいが、もしKOされたりしたら、次にはさらに重い責任を背負ってマウンドに上がらなければならなくなる。

 失敗は許されない。その恐怖は着実に、日を追うごとに迫ってくる。そんな重圧が、山口のような性格の投手には向かないのではという心配だった。

「まだ気持ちの持ち方がよく分からない。今は中継ぎのときより抑え気味なテンションでマウンドに上がっているので難しかった。でも色んなことを経験して、慣れていくしかないんでしょう」

 キャンプの紅白戦で先発マウンドに上がった山口の感想だった。

ローテ枠は未確定。先発転向は「あくまでチャレンジだ」。

「あくまでチャレンジだ」

 原監督は今回の山口の転向を説明する。

 決して先発ローテーションを与える約束をしたわけでもないし、再びの配転がないと決めたわけでもない。ただ一つ、この左腕の将来の可能性を広げるための挑戦だという。

 あとはシャイなグッさんが、自分でどう道を開いていくか、ということになる。

 シーズン後半の東京ドーム。お立ち台の山口が堂々とヒーローインタビューを受けられるようになっていれば、巨人がセ・リーグを4連覇するということだろう。

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