イチロー メジャー戦記2001BACK NUMBER
罵声。
text by
奥田秀樹Hideki Okuda
photograph byKoji Asakura
posted2001/04/30 00:00
マリナーズが好調を維持している。ニューヨーク・ヤンキースにも2連勝で、ここまで17勝4敗。イチローも「こんなに強いとは思わなかった。試合の中で充実感があります」と語っている。
ヤンキースの先発はクレメンス、ペティートとエース級だったが、食い下がり、接戦に持ち込み、最後は佐々木をはじめとする強力ブルペンで競り勝つ。いつものパターンだった。まだ8分の1とはいえ、優勝を意識するのに十分な出足である。
ヤンキースタジアムといえば、ファンのマナーの悪いことで有名である。去年までマリナーズの正右翼手を勤めた先輩ジェイ・ビューナーはこう話していた。
「あそこのファンは本当にクレージーだ。乾電池、コイン、かたゆで卵、ビー玉、投げられるものならなんだってぶつけに来る。特に忘れられないのは'95年のプレーオフ。2階席からペプシの大きなボトルが降って来たんだ。あそこまでくると犯罪行為だよ」
犯罪行為といえば、エンジェルスのベテラン一塁手ウォーリー・ジョイナーは小型ナイフを投げつけられたことがあるらしい。
もっとも、4月24日、イチローのニューヨークデビュー戦では、こういったトラブルはなかったようだ。2週間前、オークランドでコインの洗礼を受けたイチローだが、「ファンのマナーは良かったです、何も飛んでこなかった」と語っている。
ビューナーにコインの話をすると、彼はおもむろにグローブを出して見せてくれた。
「ファンがコインを投げてきたら、せっかくだから頂戴して、グローブに挟むことにしているんだ。グローブがいっぱいになったら、ズボンのポケットに入れる。楽なお金儲けだし、前にマリナーズにいたケン・グリフィーJr.と、どっちがたくさん稼いだか競い合ったものさ」
ところで、ヤンキースタジアムが危ない理由は、右翼の定位置が観客席から近いからである。左のプルヒッターに有利に作られており、外野ファールグラウンドは存在しないも同然だし、右翼ポールまでわずか95.5mである。ベーブ・ルース、ロジャー・マリスの時代はそれより短い90mで彼らはそれで随分得をした。
イチローも「今まで見た球場の中で最も小さく感じました。外野からバックネット裏や内野席がすごく近く見える。ファウルグラウンドがほとんどないので、変な錯覚をする」と話している。
ちなみに、ファンのマナーが悪いといえば、ボストンのフェンウェイパークも相当のものらしい。こちらは5月8日から10日に試合が予定されている。