総合格闘技への誘いBACK NUMBER
神の子よ、どこへ行く。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph bySusumu Nagao
posted2009/02/18 00:00
今年の3月で旗揚げ丸1年となるDREAM。全6大会、観客動員と視聴率でPRIDE時代よりも苦戦を強いられたというが、1年通してコンスタントに運営、地上波放映したのは特筆に値すると言っていいだろう。なにせ諸問題が重なり、一時は、もはやこれまでと言われていた総合格闘技である。年末のDynamite!!が変わりなく開催されたことも含め、徐々にだが復活の兆しを見せているのではないかと筆者は思っている。DREAMというコンセプトやカラー、選手たちのキャラクターもようやく浸透しはじめているようだし。
さて、昨年のDREAMは、ミドル級グランプリとライト級グランプリを基軸に展開していったが、今年はウェルター級グランプリとフェザー級グランプリを中心にまわっていく。中でも注目なのは、3月7日にさいたまスーパーアリーナで行われる『DREAM.7』において開幕するフェザー級である。
契約体重は65kg以下という、ライト級を下回る最軽量のクラスとなるが、迫力とテクニック、スピードは他の階級と遜色ない。そもそも欧米諸国の選手たちにくらべ平均的に体格が小柄な日本人、その選手層の厚さからレベルは高く、フェザー級は日本人選手の活躍が期待できる階級というわけだ。
出場選手は、“戦うフリーター”としてお茶の間でも知られる所英男を筆頭に、今成正和、山本篤、高谷裕之、ウィッキー聡生、大塚隆史、ビビアーノ・フェルナンデス、ミカ・ミラー、チェイス・ビービ、ジョー・ウォーレン、キム・ジョンウォン……と、書いてみたのはいいが、ほとんどが目の肥えた格闘技ファンにしか分からない選手といった状況だ。うーん、これはちょっと寂しいような気も……いやいや、昨年のことを思い出しても、誰がゲガール・ムサシやエディ・アルバレスが活躍し日本で人気を博すことを予想できただろうか。この面々からもスターがきっと登場するにちがいない。うん、期待しよう。
ただ、このフェザー級、決定的なピースが欠落していることは確かである。
それは何かといえば、日本軽量界最強の男と呼び声の高い、そう、山本“KID”徳郁の存在である。
'07年の大晦日以来、もう久しく彼の戦う姿を見ていない。KIDは、格闘技界に新しい流れを作るべくDREAMの中心選手として目されていたが、昨年の5月にジョセフ・ベナビデス戦で満を持しての初登場の予定も試合前の練習で右膝前十字靱帯を断裂し、結局試合は流れてしまった。その後、KIDは手術を行い現在に至っており、怪我の回復が思わしくないのかフェザー級参戦は今のところ見送られている。
そもそもこのフェザー級設立は、日本人選手の底上げが目的ではあるが、ある面ではKIDのために作られた階級だと言っていい。これまでの最軽量の階級であるライト級(70kg以下)は、KIDのベスト体重とはいいきれなかった。5kgの差は格闘技では、その衝撃力や体力的に雲泥の差があるといってもいい。KIDという類まれなタレントを生かすためにもフェザー級は最も適した階級なのだ。
DREAMのイベントプロデューサーの笹原圭一氏もこの階級のKIDの立場を次のように語っている。