詳説日本野球研究BACK NUMBER
春季関東野球大会にスカウトが殺到。
清原、松井クラスの逸材を検証する。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/05/20 10:30
春季関東野球大会において東海大甲府・高橋周平は、2試合で8打数5安打の打率6割2分5厘で二塁打4本、3打点と実力を存分に発揮。「大きな大会でも自分のバッティングができた」と夏に向けての手ごたえを感じていた。
高橋の課題は技術面よりも精神面の成長にあり。
これらの課題がどうなったか興味をもって高橋を見たのだが、2回戦の八王子戦の第3打席では低めの難しいボールをおっつけてセンター左へ運んでいる(二塁打)。
そして準々決勝の習志野戦では8-4で敗れたものの、3安打2打点の活躍を見せた。第2打席、1ボール0ストライクからのストレートを左中間に二塁打、第4打席は外角低めのストレートをコンパクトなスイングで捉えて左直、第5打席は1-2からの内角高めストレートを強烈に押し込んで右中間に運ぶ二塁打と、高低、内外角のボールに対応していた。
さらに素晴らしいのがこれらの打席、すべて捕手寄りのポイントでボールを捉え、広角に打ち分けているのだ。
スカウトが熱心に足を運ぶ理由がわかっていただけると思う。
相手が勝負してくれない弊害は、ボール球に手を出す悪癖に現れていた。
関東大会にさきがけて行われた4月29日の山梨大会3回戦の甲府昭和戦では、第5打席で中前タイムリーを放っているが、これは初球の高めボール球(ストレート)を強引に打ったもの。関東大会の八王子戦では、第2打席、外角主体の配球に焦れたのかボール球に何回か手を出し、最終的には内角いっぱいのストレートを打たされて一飛。八王子バッテリー側に立てば、内角寄りのストレートを打ちたくて仕方がない高橋の心理を突いた見事な配球だったと言ってもいい。
打ちたい欲望にどれだけ歯止めをかけられるか、高橋の新たな課題がそれまでの技術面から精神面に移ってきているのがわかる。
唐川侑己が目標の専大松戸・上沢は頭脳的投球術が光る。
一方の投手では、打者の高橋周平のように注目される選手はいたのだろうか。
専大松戸の右腕、上沢直之が私にとっては関東大会のナンバーワン投手だった。何が素晴らしいかといって、上沢はスピードに過剰な欲求を持っていない、というところだ。
185センチ、85キロという十分すぎる体格を誇りながら、その体躯を前面に出したパワーピッチングをよしとしない。
ストレートは外角低めを執拗に突いて、このストレートと同じ腕の振りで横ブレの小さい縦割れのカーブ、スライダーを主に内角に配し、左打者の外角にはブレーキがよく効いたフォークボール(ツーシームか)、さらに落差の大きいチェンジアップを配するという頭脳的ピッチングを毎試合のように展開するのだ。