巨人軍と落合博満の3年間BACK NUMBER

「裏切り者」嫌われた巨人軍「アウトォー」のヤジも…最悪の状況で落合博満41歳がホームラン“逆襲のオールスター”「居心地悪かったよ」 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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posted2024/03/10 11:05

「裏切り者」嫌われた巨人軍「アウトォー」のヤジも…最悪の状況で落合博満41歳がホームラン“逆襲のオールスター”「居心地悪かったよ」<Number Web> photograph by KYODO

1995年のオールスター第1戦(7月25日)。表彰台で握手する、優秀選手のイチロー(オリックス)、清原和博(西武)、最優秀選手の落合博満(巨人)

 元阪神の四番打者・掛布雅之は、40代で3割以上の打率を残すオレ流の卓越したバットコントロールを評価する一方で、「ストレートに対して体の切れが悪くなり、腕をたためなくなっている」とスラッガーとしての衰えも指摘する。

「うまさを感じさせるヒットで打率を残すことは出来るだろうが、四番としての強さは生まれてこないし、追い込まれるとあっさりと三振してしまうモロさが同居しているのだ。(中略)衰えを隠せない落合がもし首位打者狙いに的を絞るなら、それは重量打線崩壊の巨人を象徴しているとは言えないか」(週刊文春1995年8月31日号)

そして原辰徳が“現役引退”へ

 7月終了時、首位ヤクルトに8.5差をつけられ、長嶋監督は「最後まであきらめません。メークドラマですよ」と前を向いたが、Aクラス争いがやっとで連覇はすでに風前の灯だった。後半戦はドラフト1位ルーキーの河原純一を先発ローテに定着させ、家庭の問題で帰国してしまったハウエルの代わりの三塁には、若手の後藤孝志や吉岡雄二を起用する。

「FAは若手を育成する時間と余裕を作るため」という長嶋監督の言葉通り、「次代の巨人軍」へ着々とチーム作りは進んでいた。その流れに抗い、最年長首位打者に挑戦したのが落合であり、対照的に大型補強と世代交代で出場機会を失い、ついに現役引退を決断するのが、プロ15年目の原辰徳である――。

 いわば栄光のV9やONから続く、古き良きジャイアンツの幻影を背負い続けた原の引退により、ひとつの時代が終わろうとしていた。思えば、1995年の東京ドームで巨人ファンから最も大きな声援と拍手が送られたのは、背番号8が右打席に向かうときだった。

<前編《落合まさかの退場》編から続く>

#32に続く
「落合さんには絶対負けないから…」現役引退直前、巨人・原辰徳が悩んだ“37歳の孤独”…41歳落合博満へのライバル意識「ああ、どうしてだ!」

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