誤算続きで、遠ざかるヤクルトの背中。野村克也監督は、開幕前の激励会の席で桑原潤オーナーから「野村監督は今季限り」という異例の通告をされながら、5月2日には球団最短の貯金10をマークする戦前の下馬評を覆す快進撃を見せていた。主軸の広沢とハウエルを宿敵に奪われながらの首位独走に、野村監督も連日のように長嶋監督や落合を挑発する。

「（欠場中の落合が）出てきてくれたほうが助かる。今でも（巨人の打線は）つながっとらんのに、さらにつながらなくなるから大助かりや。世間でいう“落合効果”なんか、そんなもん、あらへん！　去年の日本シリーズなんか、落合が出なかったから巨人は勝てたんであって、落合がチームを引っ張ったのを見たためしがない。落合が三冠王を取った年はみんなチームの成績が悪い年だし、帳尻合わせしかできない男や」（東京中日スポーツ1995年5月12日）

「無視された」落合“退場処分”のウラ側

　打率ベストテンに顔を出しながら、チームが勝てないと真っ先に叩かれるのが、日本中から注目されていた時代の巨人四番の宿命でもある。以前、原が通った道を今度は落合が経験したわけだ。そして、6月7日の敵地に乗り込んだ横浜戦では、3回裏にアクシデントが起こる。

1995年6月7日の横浜戦。事件は3回裏に起こった。石井琢朗が三塁前バントし、滑り込む。ファースト落合はセーフの判定に抗議【1枚目／全2枚】　©KYODO

　一死一塁で三塁前にセーフティーバントをした石井琢朗が一塁にヘッドスライディング。際どいタイミングだったが、セーフの判定に一塁を守る落合が激怒するのだ。この抗議の際に有隅一塁塁審を両手で突いて、自身9年ぶり二度目の退場処分に。なお、日本人四番打者の退場は巨人史上初のことだった。そのらしくない行為に、マスコミでは前夜のデニー友利が投じた背中付近を通過するブラッシュボールへの苛立ちと繋げたが、真相はまた別のところにあった。

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