前線の積極的な守備と、バックラインの粘り。

　この日はブラジルの出方を見たうえで、ボールを保持しようとしていた。森重はこう語っている。

「（ブラジルは）前からはめてくるわけではなかったので、ゆっくりつないだとしても宏介のサイドで押し込んだりもできた。試合をやりながら、つないでいってもゴール前まで行けるという感覚も持っていた」

　守備の我慢も続く。

　プレスを掛けていくなかで、インサイドハーフの柴崎岳と森岡が同サイドで積極的にアプローチに向かい、そこをかわされてしまうと空いたスペースにボールを出されてピンチを招いたシーンなどもあり、バランスが崩れかけても、なんとか耐え切っている。前線の積極的な守備を奨励しつつ、後ろが持ちこたえていった。

　前の陣形が崩れても、森重はアンカーの田口をなるべく中央から動かさないように指示している。1点を許してしまったとはいえ、ブラジルの前半の決定機は先制点とネイマールのもう1本のシュートぐらい。

　日本も前半35分に、酒井高徳のクロスから岡崎慎司がシュートに持ち込んでいる。ブラジル相手にも前線でアグレッシブに戦い、守備でも貢献する岡崎の存在もあって勝負を後半へとつなげた。「前半は闘うことができ、いい時間帯があったと思う」とのアギーレの言葉にもうなずける。

「我慢」が決壊した後半。

　しかしながら、後半にその「我慢」が決壊してしまう。

　立ち上がりの3分、柴崎がボールをコウチーニョに奪われると、ネイマールに出されて2点目を失う。積極性と我慢のバランスが崩れ始め、ボールを持つと「焦り」からミスが増えた。

　前掛かりになって、ミスをしてカウンターの餌食になるという悪循環。相手を押し込んだ状態からカウンターを受けて3点目を失うと、4失点目も日本のCKからボールをつながれてゴールまで持っていかれた。途中出場の細貝をボランチから前に上げてカウンターの起点をつぶそうとしたが、ギアを上げてきたブラジルの流れは食い止められなかった。

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