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日ハムの指名に会場から拍手喝采が。
2011年ドラフト、全球団を徹底検証!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2011/10/28 13:00
日本ハムに強行指名された菅野智之は「監督だったり、両親と相談して決めたいなと思っている」。菅野の父親は「ドラフト制度を否定するわけじゃないが困惑しています。こちら側には何も話はなかったし、誠意を感じない」とコメント
菅野獲得は確実、と思われていた巨人はどうしたか?
◇ヤクルト 70点
高橋周平の抽選で負けても高校生野手の川上に向かうというブレのなさこそ、近年、ヤクルトが資力に乏しくとも上位に多くいられる理由だろう。
川上は強打だけではない。ランニングホームランを打ったときの本塁生還(ベース一周)が15秒台という俊足を誇り、投手兼任でマウンドに立てば140キロ台中盤のストレートを投げ、この地肩の強さを生かした外野(中堅手)守備も一級品。高いレベルで3拍子揃ったプレースタイルこそ川上の魅力である。
2位には最速148キロのストレートを誇る木谷良平(投手・日本文理大)、3位には社会人屈指の俊足を誇る比屋根渉(外野手・日本製紙石巻)と一芸名人を並べ、4位以下に即戦力候補の大学・社会人の投手を配した。70点をつけたが、意欲が感じられる指名で、ヤクルトの持ち味は存分に出せた。
◇西武 60点
2年連続で人気ナンバーワンの左右本格派、菊池雄星(花巻東)、大石達也(早大)を指名したのにくらべ、おとなしい指名になった。
実戦的な投手主体の指名は、それだけ西武投手陣の脆弱さを物語っている。とくにゲーム中盤から終盤を託される中継ぎ陣が弱い。
十亀剣(投手・JR東日本)は愛工大名電、日大時代は、ボールに勢いはあっても制球が定まらず、主戦の役割が果たせなかった。それが社会人になってからフォームがコンパクトになり、コントロールに安定感が出てきた。こういう変化はピッチングから迫力を奪いそうだが、ストレートは速くなり、さらにコントロールがよくなったため、たとえば右打者の内角攻めにも躊躇しなくなった。
この十亀を先発で起用するのかリリーフで起用するのか、渡辺久信監督が昨年の大石に続いて頭を悩ますことになりそうだ。
◇巨人 70点
意中の菅野を獲得できず、すぐ舵を将来性に切ったのはさすがドラフト巧者だ。
1位松本竜也(投手・英明)は指名選手中、この1年で最も成長した選手と言っていい。190センチ以上ある投手は下半身の出来上がりが遅れる傾向にあり、高校の3年間では未完成のまま終わることが多いが、松本は上・下半身をバランスよく使える強さがある。このフォームの安定感が球筋の安定感につながり、夏の甲子園大会ではスカウトの注目を一身に集めた。2、3年で一軍という青写真は描きにくいが、5年というスパンで見れば十分、一軍に上がれる一定の完成度を備え、ボールの力もある。
◇オリックス 60点
強力投手陣が持ち味になりつつあるオリックスが、今ドラフトで野手主体の指名に走ったのは当然と言えば当然。
ただし、1位安達、2位縞田拓弥(遊撃手・JR東日本)、7位小島脩平(遊撃手・住友金属鹿島)と、3人の社会人遊撃手を指名したのはどうかと思う。60点と低い点数にした理由だ。
安達は攻撃的なディフェンススタイルに魅力がある。レギュラーの大引啓次がオーソドックスな分、攻撃性を重視し、大引を刺激しようという意図がありそうだ。縞田の魅力もその一点にある。大引がこの指名に対してどう思い、どう変わるのか見てみたい。