「すいません、KOできなくて……」
横浜のWBC世界S・フライ級タイトルマッチで初防衛を果たした王者川嶋勝重の試合後の第一声がこれだった。世界14位のメキシコ人挑戦者ラウル・フアレスに大差判定勝ちも、3度のダウンを奪いながらKOに仕留め切れなかったのが不満だったのだ。師匠の大橋秀行会長も「今日の相手は倒さないと……」と注文をつけた。
本来「KO狙い」は邪道とジムのトレーナーは教え子たちに諭すが、大橋・川嶋の師弟コンビはかなり本気だった。これには、最近のわが国ボクシング界の人気低迷が強く影響している。川嶋を含めてイーグル京和、新井田豊と3人の世界王者を擁しながら、隆盛には程遠い現状を打開するには、よりインパクトのある試合が必要で、それには王座獲得戦で徳山昌守を1ラウンドで沈めた時の豪快なKO勝ちの再現をと、強く意識していたのだ。
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