打棒ひとつで本塁打か否かが分かれる世界。その生産現場では、海外勢力がデータを重んじ、 一方、日本勢は古き良きモノづくりを売りにする。バットづくりの最新事情を解き明かしに、「バットの街」と海外メーカーのラボを訪ねた。(原題:[メーカーに直撃取材]匠の技か数値化か──バット製造最前線)
雄大な立山連峰を望む砺波平野は、稲刈りの時期を迎えて黄金色にそまっていた。北陸新幹線、新高岡駅で城端線に乗り換え、40分かけてたどり着いた福光駅。この街、富山県南砺市福光は日本最大のバット生産地として、長く球界を支えてきた。
「バットの街」福光には、酒屋の主人が趣味で始めた、南砺バットミュージアムがある。長嶋茂雄、王貞治、イチローといったレジェンドたちのバット500本以上が並ぶミュージアムは、世界遺産の白川郷から広大なチューリップ畑へとつながる観光ルートの知る人ぞ知る見どころのひとつだ。
高校野球が木製バットから金属バットに移行した1974年を境に生産量は減り続けているが、福光ではいまも5つの工場が稼働している。その中でも最大規模の工場が国内大手の一角、SSKを含めた年間7万本を手がけるロンウッド。四方を田んぼにかこまれたロンウッドの工場に足を運び、日本のバット事情を探った。
「正直に申し上げると、ウチの木製バットはかなりアゲインスト(逆風)ですね。少子化に加えて、スポーツそのものも多様化しているので」

こう語るのはSSKベースボール事業部企画開発部の松井尊嗣さん。松井さんの言う逆風には、2021年に日本法人を設立したマルチ&ヴィクタスなど、アメリカブランドの攻勢も含まれる。
汐留のオフィスで行われるバットフィッティングとは?
実は福光に行く前、筆者はNPBですでに2割ものシェアを獲得しているというマルチ&ヴィクタスを取材していた。田園風景とはかけ離れた都心のビジネス街、汐留の同社のオフィスでは、想像のはるか先をゆく商品開発が展開されていた。
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photograph by Miki Fukano
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