22年前、衝撃のデビュー戦をもって最強馬の歴史が幕を開けた。一方、2着馬に跨っていた男は、道中で違和感を覚えていたという。計3度「逃げ」で対峙した元騎手が知る、その“異変”の正体と、対決や研究を通じて手にした競馬人生の糧を今振り返る。(原題:[“逃げた”騎手が振り返る]2004 新馬戦「背後に迫る威圧感」)

ソワソワしているような、前に進もうとしていないような、なんとも表現しづらい違和感。最終コーナーを回りきって直線に入る少し前から、佐藤哲三は自分が乗っているコンゴウリキシオーの様子がどこかおかしいことに気づいていた。
レースは順調すぎるほど順調に運べていた。スタートを決めると、他に先手を主張する馬はおらず、自然と先頭に立つ形になった。スローペースに落とし、ゆったり逃げる。いい感じだ、と佐藤は思った。
2004年12月19日、阪神競馬場。すべての馬がデビュー戦となる2歳新馬戦なので、相手の詳しい情報は持っていない。ただ、アイルランド生まれの外国産馬コンゴウリキシオーが立派な馬体と、水準以上のスピードとパワーを持っていることは分かっていた。実際、コンゴウリキシオーはのちに重賞を4勝もするほどの馬だった。
阪神の芝2000mは内回りコースを使うため、直線は長くはない。これなら逃げ切れる。そう思いながら3コーナーから4コーナーへ。ずっと2番手をついてきたテイエムカイブツが、外からやや接近してくる。謎の違和感は、そこで生じた。
佐藤がようやくその違和感の正体に気づいたのは、直線に入りテイエムカイブツを突き放したところだった。さらに外から1頭、迫ってくる馬がいたのだ。武豊が乗るディープインパクトだった。
「トレセンでは評判になっている馬だったけど、調教を自分で見たわけでもないし、どんなもんかな、と思っていたんです。実際に見たら、馬もそんなに大きくないし」
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photograph by TOKYO SPORTS PRESS
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