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「FAによるものやったのかな」近本光司が直面した開幕前の“不安”と38打席無安打というトンネル「結果に囚われているなって」【阪神タイガース】

2025/10/03
通算200盗塁も達成した近本。中野(左)との不動の1.2番コンビは、今年も相手投手陣の脅威となった
テーマが定まらないのはプロ7年目で初めてだった。個人の結果には、悔しさばかりが残っている。それでも節目の記録と国内FA権取得に挑む中で今まで感じたことのない充実と喜びを手に入れた。(原題:[リードオフマンの苦悩]近本光司「楽しいを探しながら」)

 ラストボールは足を止めた近本光司のグラブに収まった。

「本当にホッとしています」

 自身初の優勝を経験した2023年9月14日と同じ甲子園のセンターで歓喜の瞬間を迎えたが、景色は違った。

 9月7日、広島戦の9回。先頭の小園海斗の打球を捕球した。「もうないかな」。2年前は二塁・中野拓夢がウイニングボールをつかんだ。今回も自分ではない気がしていたが、そんな予感はあっさり裏切られた。最後の打者・秋山翔吾が打ち上げた白球は真っすぐに中堅方向へ。少し背走すると、正面を向いて大事そうに両手で包み込む。前を向いて走り出した近本は最高の笑顔だった。両翼の熊谷敬宥、森下翔太とハイタッチして、歓喜の輪へ。

「最後また飛んできて、それでゲームセットやったので、うれしいというか、ホッとするなという気持ちです」

 いつもの冷静さはない。興奮で声が上ずった。

 開幕の1週間前、近本はこう話していた。

「4月の1カ月は、前半の方向性を決める1カ月になると思う」

SANKEI SHIMBUN
SANKEI SHIMBUN

 自主トレやキャンプで取り組んできたことが、どう表れるかは“本番”、つまりシーズン中の試合でしか分からない。だから毎年、4月の1カ月でフィードバックを取りながらテーマを決めていく。

 しかし、今年はそううまくはいかなかった。4月が終わっても方向性が見えてこない。5月も状況は変わらなかった。「これかもしれない」と思うものは出てきても、次の日になれば全然だめ。「やばいな……」。毎日正解が分からないなんてプロ7年目で初めてのこと。焦りは募っていった。

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photograph by Hideki Sugiyama

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