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「見といて。間違いなく大丈夫」藤川球児が監督就任会見の夜、漏らした言葉…“あの日の若虎”は夢を現実に変える《阪神タイガース優勝臨時増刊号・巻頭エッセイ》
球児、ちょっと頼みがある――。
あれは2004年シーズン終了後の10月下旬。当時の阪神の二軍施設、鳴尾浜球場での練習を終えた藤川球児に声を掛けた。
「どうしたん急に?」
球児は驚いたような表情でその場に立ち止まった。ちょっと――。わずかな、ほんの少しの。でも、時にそれは「かなりの、無視できない程度の」という真逆の意味で使われることもある。この時はどっちの意味で使ったんだったか。ちょっと思い出せない。どちらかと言えば前者に近かったか。ただ、その風情から察するに、球児は明らかに後者の意味で受け止めたようだった。
すまん、来年の話だ。2005年は必ず球児の年になる。あのストレートは球界に旋風を巻き起こし、猛虎優勝の象徴となるはずだ。ついては……、頼みが二つある。
来年の球宴と、秋の優勝紙面。我がデイリースポーツで球児の独占手記をやらせて欲しい。今のうちに予約させてくれ――。
こちらの話を聞き終えると、球児は緊張の衣を剥ぎ取った。そして、笑い転げた。
「アハハ! そんなん無理無理」
いや、手記の予約が無理だと言ってるんじゃない。いつもの早口で、球児が言う。
「優勝はともかく、オールスターなんか出たこともないのに。それどころか、投票はがきに名前が載ったことすらないのに」
でも、オレには確信があった。故障がちな若虎から、球界を代表する「魔球使い」へ――。コイツ、化けるぞ。球児の人生が変わろうとしている。'04年後半の一軍昇格後に一瞬見せた、あの浮き上がるようなストレートの球筋から、そう感じた。
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※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
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