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【沖縄尚学】「…それはないです」末吉良丞の“小さな声”に透けた新垣有絃との「静かで熱いライバル関係」《2年生Wエースの意外な個性とは?》

2025/08/28
(左)9回裏、四球と自らのエラーで背負った1死一、三塁の場面。末吉はゲッツーで試合を決めると歓喜のガッツポーズ / (右)大会を通じて317球24奪三振の新垣。「有」の字はダルビッシュ(パドレス)にあやかって付けられたという
沖縄勢15年ぶり、同校初の夏制覇は、マウンドに立つ1番と10番の、まさに両輪の活躍によってもたらされた。しかしふたりの2年生エースは、プレーを観ているだけではわからない、意外な個性の持ち主だった。(原題:[優勝の原動力]沖縄尚学「静かで熱いライバル関係」)

 唇から10cmほどのところにICレコーダーや携帯電話が10本ぐらい突きつけられていた。

 決勝のあとの新垣有絃の取材風景である。

 新垣は末吉良丞と並ぶ沖縄尚学の二枚看板のうちのひとりで、背番号「10」を背負っていた。

 初めて新垣を取材したときは心底、驚いた。2人の間隔は1mほどの距離だったにもかかわらず、新垣の声が聞こえなかったのだ。小さく口を開いているだけで、声を発していないのではないかとさえ思えたほどだ。

 記者たちも毎回、そんな新垣の声の小ささに難儀していたものだから、無遠慮にも最終手段として録音機を口元に突き出さざるを得なかったのだ。

 新垣は目の前の録音機の放列に圧倒されていたのだろう、体を小さくのけ反らせながら取材を受け続けていた。

 監督の比嘉公也はこうあきれる。

「声が小さいというか、しゃべらないっす。選手間ではわからないですけど、僕はしゃべるの、見たことがないんで」

 副キャプテンで、1年先輩の嶺井駿輔は新垣の素顔は「かまちょ」だと言う。

「めっちゃ、かわいいんですよ。いつもちょっかい出してくるんで。『うぇ~い』みたいな感じで。僕のほっぺたにヨーグルト付けてきたりして」

 やはり先輩である宮城泰成も似たようなことを言った。

「僕がなめられてるだけかもしれないですけど、いっつもからかわれている感じですね。取材になると、コミュ障気味になっちゃうんですけど」

 新垣のリアクションは原則的に二通りしかない。短く答えるか、黙ってしまうか。甲子園は投げやすかったと話す新垣とのやりとりはこんな感じだった。

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photograph by Hideki Sugiyama

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