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【引退インタビュー】「突如、ニート生活を…」鮫島彩が語る“なでしこ世界一”からのドン底と指導教官・安藤梢《今は女子大生》

2024/08/10
今年5月に引退を表明した女子サッカー元日本代表・鮫島彩
印象的な“女の子走り”でタッチライン際を駆け抜け、史上初のW杯優勝、ロンドン五輪銀メダルも手にした。しかし、その先には心が折れそうになる苦難もあった。スパイクを脱いだサイドバックが明かす、世界制覇後の胸中。(原題:[引退記念インタビュー]鮫島彩「世界一からの葛藤」)

 あるのは、根拠のない自信――。不意に彼女の口にした言葉が記憶に残っていた。あれは初めて取材した2011年の秋だから、13年前のことである。どうやら、いまでも変わってないらしい。

「私、自己効力感が高いのかも」

 そう言って、クスっと笑う。自己効力感とは、ある目標に対し、自分ならやれる、うまくいく――と認識することだ。子供の頃から、ある種の“暗示”をかけられてきたことが現在のポジティブ思考につながった面もあるという。

「親からよく言われていたんですよ。あなたは本番に強いから大丈夫って。そういう意識が刷り込まれているんでしょうね」

非凡な仲間たちと同時代にサッカーができて良かった。

 ひょっとすると、あの日もそうだったのかもしれない。なでしこジャパンが初優勝を成し遂げ、日本全土に歓喜をもたらした2011年7月17日、女子ワールドカップ決勝である。

PK戦を制した'11年W杯決勝 AFLO / Getty Images / KYODO / Noriko Hayakusa
PK戦を制した'11年W杯決勝 AFLO / Getty Images / KYODO / Noriko Hayakusa

 相手は強豪アメリカ。左サイドバックを担う彼女の対面にはヘザー・オライリーという強力なウイングがいた。速い。とにかく、速かった。守備陣だけのミーティングで映像を見ながら、ひたすら話し合い、対策を練ったという。

「あれって、私たちからすれば恐怖映像。それを見ながら、こうなったら、こうしようと。相手の怖さに震えながら(笑)」

 ただ、ひとたび試合が始まると、ピンチの場面でさえも楽しんでいたという。アメリカの巨砲アビー・ワンバックのシュートがクロスバーを直撃した瞬間には、思わず「わぉ」と声を上げていた。

「普通、プレー中に楽しいと思うことってないじゃないですか。もう必死だから。でも、あのメンバーは特別でしたね。一緒にサッカーをやっていて、本当に楽しかったんです」

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photograph by Miki Fukano

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