東京五輪に続き、再び大舞台に挑む日本マラソン界のエース。6位だった3年前を糧に、変わることを恐れず、走り続けてきた。世界の視座で鍛錬を続けるリアリストが描く、メダル獲得の戦略とは。(原題:[フロントランナーの戦略]大迫傑「マラソンはビックリ箱だと思う」)
石畳のテクニカルな路面と最大156mの高低差。パリ市内を巡る42.195kmは「オリンピック史上最難関」とも言われる。オペラ座、ルーブル美術館などを巡り、エッフェル塔を見た先に迎えるゴールで、日本のエース・大迫傑は何を掴もうとしているのか。7月中旬、アメリカからスイスに移動したばかりの本人に話を聞いた。
いい結果を出したい、表彰台を目指したいと強く望んでいる。
――パリに向けて仕上がってきましたか?
「順調ですね。ポートランドで1万mのレースで刺激を入れ、ボルダーでは距離も積む中でスピード系のメニューも入れられたので、いい流れで練習ができています。実はもう少しアメリカに滞在予定だったんですけど、予想以上に乾燥して暑かったので、気候が落ち着いた場所でコーチのピート(・ジュリアン)とも合流して最終調整をしようと思い、変更しました」
――東京五輪の前と比べると、直前期の過ごし方が違うように見えます。
「前回と比べて気持ちの面では力みなくやれてきていますし、練習の面では本番への流れが全然違います。東京の時はコロナ禍で、五輪前最後のマラソンが17カ月前とかなり間隔が空いたのに対し、今回は4月にボストンを走ったので、それも利用しながらの別パターンの調整になってます」
――2023年1月、大迫選手から「中庸」という言葉が出て驚いたことがあります。世界トップの選手と自分のレベル差を認識し、「もっともっと」と走行距離を追い求め過ぎる大迫選手に対して、コーチが手綱を引いた言葉だと理解していました。いわば「やり過ぎるな」と。
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photograph by Shota Matsumoto