#971
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《独占インタビュー》「思考面は今でも成長」フランクフルト長谷部誠の衰えぬ情熱に迫る「自分のキャリアは決して順調ではなかった」

2024/05/09
ドイツの地で喜びも苦しみも味わい、謙虚な姿勢を貫き居場所を見つけた。ベテランと呼ばれる今、肉体の衰えや体力の限界を感じるときはある。それでも、人生を楽しめている。サッカーへの情熱は、少しも衰えていない。(初出:Number971号長谷部誠 [独占インタビュー] 「35歳の充実感」)

 ウィンターブレイク明けの1月19日、フランクフルトはホームのコンメルツバンク・アレナでフライブルクに快勝した。

 翌日。昨年末に負った負傷も癒えて先発フル出場を果たした長谷部誠は、宵闇に包まれたフランクフルトの街中にあるカフェで、柔和に微笑んでいた。

 ドイツでの暮らしは12年目。異国の地は、すでに自らのホームタウンでもある。幾多の苦難と辛酸と、それに匹敵する充実感を携えたなか、2日前に35歳の誕生日を迎えたブンデスリーガーが言葉を紡ぐ。

「この年齢になってもまだ、自分がヨーロッパ、ドイツでプレーできているとは思っていなかったですね。プレーの質という意味でも、ここまで周りの方に評価してもらえるとは想像していなかった。だから今の立場は自分でも驚いています。僕の場合はサッカーを通して様々なことを経験してきたぶん、年を重ねるごとにより人生が楽しくなって、充実した気持ちになれているのかもしれない。今振り返れば、20代の頃の自分は『お子ちゃまだったな』という感覚があります。もちろん今もサッカーという枠で括らなければまだまだ若輩者ですけどね。ただ、これまでの濃密なサッカー人生のなかで得た経験は、普通ではなかなか味わえないものだったのかなとも思います。喜びもあったし、プレッシャーもあったし、苦しみもあった。様々な感情が凝縮されて、そのおかげで僕は今、良い時間を過ごせていると感じています」

紆余曲折、喜怒哀楽すべてを含めて「良いキャリア」。

 ヨーロッパの第一線でプレーし続ける。その過程でどれだけの困難が伴ったかは成し得た者にしか分からない。一方で、聡明な者は成果をひけらかす無意味さも理解している。昨年アジア最優秀国際選手賞を受賞し、今季は『キッカー』誌が選ぶブンデスリーガ前半戦CB部門1位に輝くなど出色の出来だが、驕りは微塵もない。

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photograph by Ryu Voelkel

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