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<『バラード第1番』『SEIMEI』再演>羽生結弦、苦しんだ先の決断「過去の自分よりも上に行けるように」<2020年シーズンを終えて>

2019.12.6 Grand Prix Final
シーズン最終盤となる2月の四大陸選手権で、自身の代名詞とも言える名プログラムを復活。男子初の偉業「スーパースラム」を遂げるに至った大決断の真意、そして挑戦から得た新たな学びとは―。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2019-2020シーズン総集編[試練の先に見えた新境地] 羽生結弦 「“再演”は前進のための必然」)

 約2カ月が経って今なお、記憶は鮮烈で、新しい。2月初旬の四大陸選手権で、羽生結弦は驚くべき選択を行い、そしてその滑りは強烈な余韻を残した。

 最初の衝撃は、開幕5日前に発表された、『バラード第1番』『SEIMEI』へのプログラムの変更だった。

 この決断は大会そのものへの眼差しをも変えるインパクトを与えた。四大陸選手権は重要な国際大会の1つに数えられるが、一方で世界選手権に出場する選手にとっては、そこへの前哨戦的な意味合いも帯びる。観る側もまた、そうした意識をどこかに抱いている。

 それが今シーズンの四大陸選手権は、例年とは大きく様相を変えることになった。

 大会直前で優勝候補の羽生がプログラムを変更するという驚きはもちろん、平昌五輪での金メダルをはじめ、数々の栄光を獲得してきたプログラムを蘇らせることになったからだ。大会を取り巻く緊張感が高まるのは、ごく自然なことだった。

主要国際大会をすべて制し「スーパースラム」を達成。

 いざ、試合で繰り広げられた演技は、期待に違わぬもの、いや、期待を大きく上回ると言えるものだった。

 まずショートプログラム、『バラード第1番』は秀逸、と言ってよかった。

 スタートからの伸びやかさ、冒頭のパーフェクトな4回転サルコウ。今シーズン、苦戦していた4回転トウループからの連続ジャンプも軽々と決めてみせる。さらにはステップでのピアノの音との融合……。どこをとっても非の打ちどころのない演技で、得点は1‌1

 1.82点。世界歴代最高得点を叩き出した。

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photograph by Tsutomu Takasu

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