#948
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《黄金の一撃を語る》遠藤保仁が語る南アW杯・デンマーク戦、本田圭佑とのシンクロ「俺、蹴るよ」「自分も蹴るフリ出しますんで」

2024/01/29
今年1月に唐突に現役引退を発表した遠藤保仁。現在はガンバ大阪のコーチに
今も忘れ得ぬ、2010年W杯での本田と遠藤のFK競演。日本サッカー史上屈指の名場面はいかに生まれたか。そして遠藤は“相棒”をどう見ていたのか。いまだ錆びつかない名手が、当時の記憶をたぐる。(初出:Number948号 [黄金の一撃を語る]遠藤保仁 デンマーク戦FKの真実。)

 本田圭佑の隣には、いつも遠藤保仁がいた。

 フリーキックの場面になればどちらからともなくセットし、どちらからともなく声をかける。お互いに視線を壁とゴールキーパーから外すことはない。短い“作戦会議”の後、そのキックは放たれる。

 あのときもそうだった。2010年南アフリカワールドカップ、グループリーグ第3戦デンマーク戦―。

 開催地ルステンブルクは標高1500mの高地にあり、気圧が低いためボールがよく伸びた。加えてパネルの数を減らして真球に近づけた公式球ジャブラニは軌道が読みにくく「GK泣かせのボール」という評判。グループリーグ突破を懸けた一戦で、あの直接フリーキック2連発は生まれた。

 38歳になった遠藤は、ガンバ大阪の中心を担い続けている。2月24日、名古屋グランパスとのJ 1開幕戦ではサイドからパスを引き出してのコントロールショットで今季初ゴールを決めた。一流の技と駆け引きが錆びつくことはない。

 デンマーク戦の記憶。インタビューの主旨を伝えると、彼はいたずらっぽく笑った。

「いずれ自分が引退したときには、ニュースなんかでデンマーク戦の映像が真っ先に使われるんでしょうね。僕のなかでは単なる1試合にしかすぎないですけど」

 もう7年半も前になる日本のワールドカップ史上に残る名シーン。遠藤は「あの日」に立ち戻り、ゆっくりと回想を始めた。

守備的な戦いで孤立気味ななか奮闘する大久保嘉人が得たFK。遠藤の美しいキックはゴールに吸い込まれた ©Kaoru Watanabe/JMPA
守備的な戦いで孤立気味ななか奮闘する大久保嘉人が得たFK。遠藤の美しいキックはゴールに吸い込まれた ©Kaoru Watanabe/JMPA

 南アフリカにたどり着いた岡田ジャパンは反転攻勢に出ていた。

 壮行試合の韓国戦で完敗を喫するなど停滞感に包まれていたなか、岡田武史監督は1トップに本田を置く新布陣に打って出て初戦のカメルーン戦を1─0で勝利した。2戦目のオランダ戦には敗れたものの、デンマークと並んで1勝1敗の勝ち点3。得失点差で1点上回っている状況であった。

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photograph by Takashi Shimizu

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