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「イチローさんと普通に話のできる人が少なかった」松坂大輔が語る第1回WBCの内情…絶望から優勝へ~連載「怪物秘録」第36回~

2023/12/06
2006年のシーズン前に開催された第1回WBC。イチローらメジャーリーガーも参戦、大会が進むにつれて日本国内も異常な盛り上がりに。そして松坂は初代王者を手繰り寄せる投球を見せた。

 近々、野球のワールドカップが行われるという噂はあった。その噂が現実となる。2005年夏、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開催が発表されたのである。日本では参加すべきかどうかさえあやふやだったのだが、その風向きが変わったのはイチローが日本代表の一員として出場する意志を示したからだった。

◆◆◆

 イチローさんが出ることになって、驚きはありました。オリンピックに出なかったイチローさんは「世界一を決める大会なら出る」とずっと言っていましたが、そうか、そのときが来たのか、と思いました。イチローさんが初めてチームに合流したのは、直前合宿が行われる福岡のホテルです。僕らは先にミーティング会場に揃っていて、何となくザワザワしていたのですが、そこへイチローさんが到着して、一転、シーンと静まりかえりました。みんな、イチローさんの存在に気圧されていたんです。

 そうしたらイチローさん、いきなり大きな声で「おーっ、まっちゃん」って(イチローと同学年の)松中(信彦)さんをイジったんです。そこでまたみんながビビって……だって三冠王の松中さんですからね。その松中さんがイチローさんに圧倒されているんですから、どんだけすげえんだって話ですよ。僕はこれまで通り、普通に挨拶して喋りましたが、そもそも若い選手が多かったこともあって、イチローさんと普通に話のできる人がチームに少なかった。理由はそれだけではなかったと思いますが、あのチーム、最初は一つになってまとまっている感じがまったくありませんでした。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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