将棋に詳しくない知人から「最近は将棋がスポーツ感覚で気軽に見られるようになりましたね」といわれた。確かに野球やサッカーは試合開始から終了まで、得点状況を見ればどちらが勝っているか一目瞭然だ。
逆にわかりにくかった代表格が将棋である。パッと盤面を見ただけではどちらが優勢か、それなりに詳しくないとわからない。時にはプロであっても間違った判断をしてしまうなんてことも。
AIの登場でその認識がガラッと変わった。タイトル戦のライブ中継では常に両対局者の最新の期待勝率がパーセンテージで表示され、形勢が可視化できるようになったのだ。まさに「スポーツ感覚で気軽に見られる」状況である。
もちろんAIは将棋を指す側にとってもマストになっている。多くの棋士や女流棋士が自身の棋譜の精査や定跡の整理などに活用するのが当たり前になった。トップ棋士で使っていない人は、ほぼいない。
奨励会でも有段者になればAIなしだときつい。
AIマストの状況はプロ棋界に限ったことではない。奨励会の三段リーグでも同じようなことが起きている。近年、多くの四段を輩出している関西奨励会で幹事を務める池永天志五段はこう語る。
「奨励会初段まではAIなしでも上がれると思いますが、有段者になればAIなしだときついですね。いま私が見ている三段リーグに参加する関西の奨励会員で使っていない人はいないのではないでしょうか」
持ち時間が短ければ短いほど事前研究が占めるウェートは高くなる。なぜなら事前に調べてきた手ならば研究の裏付けがあるのでノータイムで指せる。しかし、そうでない手に対しては、その場で時間を使って考える必要があるからだ。
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