特別増刊
巻頭特集

記事を
ブックマークする

「“象徴”がいないからこそ」2023年の優勝には“再現性”あり。私的MVPに坂本を推す理由は?<金子達仁の猛虎熱愛エッセイ>

2023/10/10

 さあ、黄金時代の幕開けである。

 ……などと書くと、さらりと笑い流してしまう方、笑いの中に苦いものが混じる方、中には笑いを通り越して憤慨してしまう方までいらっしゃるだろう。過去にたった5回しかない優勝のたび、メディアはそう伝え、ファンは信じ、そして裏切られてきた。

 だが、今回は、今回こそは少し違うのではないかという気がする。

 こんなにも再現性を期待できる優勝は、過去になかったからである。

 '85年の時はバース様がおわせられた。'03年は星野監督がいて、井川の20勝があった。'05年は金本や今岡、JFKの大活躍があった。つまり、過去の優勝には、傑出したMVPがいた。

 ならば、今回のMVPは誰だろう。

 わたしだったら、坂本にあげたい。シーズン前、岡田監督はキャプテン制度を廃止した。ホームラン後の虎メダルも禁止した。昨年のキャプテンは坂本で、虎メダルを考案したのも坂本だった。あげく、主戦捕手は梅野だという岡田監督の宣言もあった。ここまでの逆風にさらされながら、少ないチャンスをじっと待ち、変に気負うこともなく結果を残すのは絶対に簡単なことではない。

 だが、そんな考え方が少数派だという自覚はある。大ブレークした村上や大竹を推す声はあるだろうし、湯浅の離脱を見事に埋めた岩崎、先頭打者として抜群の働きを見せた近本、打撃だけでなく安定した守りを披露した中野、木浪の二遊間、さらには4番を張り続けた大山も素晴らしかった。誰がMVPを受賞しても、多くのファンが「それもアリやな」と納得するのではないだろうか。

特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Hideki Sugiyama

0

0

0

前記事 次記事