「サッカーだろうが、ラグビーだろうが、そこはあんまり関係ないですね。結果につながるよう料理で一生懸命、後押ししていく。それだけですから」
8月なかば、バイタリティに溢れる61歳の西芳照シェフはニュージーランドから帰国したばかりにもかかわらず、疲れの色をつゆほども見せずに視線を真っ直ぐにフランスへと飛ばしていた。
サムライブルーの専属シェフとして2006年のドイツワールドカップから5大会連続でチームに同行。異国の地でも安心、安全かつ真心をこめた料理を提供するとともに雰囲気づくりに一役買うことでも評判を呼び、先のサッカー女子ワールドカップではなでしこジャパンのベスト8入りを食事面で支えた。そしてひと呼吸置くことなく、競技の枠を超えてフランスワールドカップに臨むブレイブ・ブロッサムズに初めて同行することになった。なでしこジャパンの戦いの地だったニュージーランドから帰国して1週間後には、仕上げとなるイタリア遠征にチームと一緒に出発することになっていた。
ドタバタのように見えるものの、実はそうではない。管理栄養士、チームドクター、日本ラグビー協会の担当者と幾度もミーティングを重ねてきた。要望を踏まえたうえでメニューを策定し、食材のオーダーも既に済ませた。現地での入荷が難しい玄米、十六穀米をはじめ、チューブ入りのなめ茸といったご飯のお供など120kg分を8月上旬に貨物便で送っている。
おおよその準備を済ませたうえでニュージーランドに出発していた西シェフ。なでしこジャパンがベスト4以上に勝ち進んでいれば南半球から直接、欧州に向かう手筈を整えていた。こういった調整力がある点も実に頼もしい。
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