八村塁、渡邊雄太を擁し「史上最強」の呼び声も高かった。しかし、13年ぶりの世界舞台で日本は完敗を喫した。あのとき、何が起きたのか。当時のチームを支えた2人が、2019年夏の真実と、日本が世界で勝つためのヒントを語る。
かっこいいなと思った。頼もしい背中だとも感じた。そして、篠山竜青は気づいてしまった。
「全てを背負って戦う気でいるんだな、コイツは……」
2019年に中国で行われたW杯、順位決定ラウンド最終戦。モンテネグロとの試合が始まる直前のこと。場内が暗くなり、選手紹介に合わせてコートへ出る順番を待つ通路での出来事である。
篠山の前にいた渡邊雄太が、雄叫びを上げ、顔や胸をバチバチと叩いていた。
「うぉぉぉぉーーーーー」
あの大会に臨む日本代表では、渡邊と篠山の2人が共同キャプテンを務めていた。
だが、良いところを見せられず、それまで4連敗。選手たちも、メンタル面で大きなダメージを負っていた。そんな空気を変えたいと考えた篠山は、試合直前にチームメイトに「せっかくの舞台なんだ。楽しんで戦おうぜ」と伝えようとしていた。
しかし……。
「場が明るくなるような雄叫びではなかったです。もちろん、茶化すことも、軽々しく続くこともできません。みんなが息を呑む感じの雄叫びでした。あの背中を見て、用意していた言葉をかけるのをやめました。
だって、そうでしょう? NBA選手は(さまざまな事情から)W杯出場をキャンセルしても批判されないじゃないですか。でも彼は、代表活動に来られるときには必ず参加している。代表に対する情熱は、あのころからずっと感じていますよ」
あのシーンは、渡邊が日本バスケとハートで向き合ってきていることを示す記憶である。ただ同時に、日本が極限まで追い込まれていたことを物語っている。
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