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【正田樹/寺原隼人/吉岡雄二/大野倫】“甲子園のエース”という人生を辿る「常に松坂さんと比べられちゃう」「あのころが一番辛かった」
正田樹が背負った重荷。
13年前の夏、桐生第一高のエース・正田樹は甲子園のマウンドで両手を高々と突き上げた。185cmの長身サウスポーは2階から落ちてくるようなカーブと打者の胸元をつくストレートを武器に6試合で3完封、防御率0.85と突出した数字を残し、群馬県に初の優勝旗をもたらす原動力となったのだ。
「甲子園のマウンドは独特の雰囲気で、大会が進むにつれてアドレナリンが出てくる感じでした。閉会式が終わってから、どっと疲れが出てきたのを覚えています」
今シーズンからヤクルトのユニフォームを着ている正田は、柔和な表情であの夏の記憶を振り返った。「今となっては、いい思い出としか言えないですね。みんなで優勝したのは誇りですが、それを自分の口から言うのも変ですから」。プロ入り後、曲折に満ちた球歴を歩んだからか、今年で31歳になる男は何度もそう繰り返した。
だが、あの夏が「いい思い出」になるまでに、彼は苦悩を味わっている。
2年生の夏、背番号「13」をつけて甲子園にやってきた正田は、開会式のリハーサルで憧れのヒーローと初めて向き合った。横浜高校を春夏連覇に導き、甲子園に数々の伝説を刻むことになる松坂大輔である。他校の選手が「ここに弟がいるぞ」と松坂に声をかけたのがきっかけだった。当時、正田は笑った顔が松坂に似ているとよく言われていた。
「握手をしたとき、腕の太さに驚きました。こういう人がプロに行くんだな、と」
チームは大会初日の第1試合でサヨナラ負けを喫したが、正田は「もう一度、この舞台に戻ってくる」という思いとともに、別の目標を達成する決意も新たにした。
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