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「酒豪→酒屋購入→引退→中日加入」「8年間も取材拒否&耳栓」昔から超一流ピッチャーはなんか変【MLBレジェンドの奇妙な人生】

2023/07/08
ドン・ニューカム DON NEWCOMBE
やはり、その道を極めし超一流投手のキャラクターは、一筋縄ではいかないのか。歴代サイ・ヤング賞受賞者には“クセがスゴすぎる”、愛すべき変わり者たちがいた。

 歴代最多通算511勝の投手の名を冠する「サイ・ヤング賞」は1956年に定められた。全米野球記者協会会員の投票によりMLBのシーズン最優秀投手に与えられる。27勝7敗の初代受賞者はのちに日本のドラゴンズの一塁手兼外野手として上々ではないがひどくもない打率を残した。

 なんか変だ。でも事実である。

 ドン・ニューカム。ブルックリン・ドジャースの強靭な右腕だった。

 この人、アルコールを過剰に嗜んだ。

 1977年のワシントン・ポスト紙のストーリーに本人の回想がある。

「勝とうが負けようがクラブハウスを出る前に6、7本のビールを飲んだ」

 グレープフルーツのジュースで割ったハードなリカーも好物だった。なにしろ入手には困らない。「'56年に酒屋を購入していた」(同紙)のだから。

 酔って投げはしないが宿酔いではよく放った。しだいに精彩を欠き、いくつか球団を移って1960年限りで現役引退、故郷のニュージャージー州マディソンで酒販業を営んだ。

 '62年5月。中日ドラゴンズとサインを交わした。背景には同球団の事情があった。主力放出で観客動員が伸びない。起死回生の策で「大リーガー獲得」に乗り出し、なんとか「元」大物との交渉をまとめた。

 キャリアの空白で体形は崩れ、投球はままならぬ。ただしMLBで通算2割7分1厘、15本塁打とバッティングは得意、そこで野手の契約を結んだ。登録名は印象の薄い「ニューク」。301打席73安打。2割6分2厘の数字を記録ブックにさりげなく残し、こんどこそ選手生活を終えた。

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photograph by Getty Images

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