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「イチローさんに『まだ早えーよ』って」松坂大輔が咄嗟に使った<確信>の舞台裏〜連載「怪物秘録」第27回〜

2023/07/05
イチローとの対決は初戦こそ勝利したものの、2度目の対決で初ヒットを許し、3戦目では通算100号本塁打を献上することに。しかしこれらの平成の名勝負が怪物の能力をさらに引き上げた。

 プロデビューを果たしてから6試合目の登板だった。18歳の松坂大輔はその時点で5年連続の首位打者を獲っていたイチローと初めて対戦し、3打席連続三振に打ち取った。試合後のお立ち台で「今日で自信から確信に変わったと思います」と語った、あの言葉の真意はどこにあったのだろう。

◆◆◆

 ずいぶん生意気なことを言いましたね。そりゃ、イチローさんに「まだ早えーよ」って言われますよ(笑)。日本でナンバーワンのバッターに対して、最初の対戦だったとはいえ3つも三振を取ることができて、やれるという確信に近い感覚があったんでしょう。これで自信になったというより、もっとできるという確信めいたものを自分の中でイメージしたのかもしれません。

 それにしても、我ながらよくそんな言葉が出てきたなと思います。そもそもプロでやれる自信は持って入ってきましたが、イチローさんを抑えたことで、わずかに残っていた不安が消えた。だからああいう言葉が口をついて出たんだと思います。だって三振は空振りも見逃しも、ストレートもスライダーも両方ありましたからね。

 僕、あのときのオリックス戦では完投していないんです。8回を投げ終えたときに2-0で勝っていた(被安打3、13奪三振、141球)けど、最後は西崎(幸広)さんに交代しました。

 ベンチで広報の人に「勝ったらヒーローインタビューだから」と言われたので、どんな質問をされるのかをイメージしていたんです。当然、イチローさんのことは訊かれると思いました。対戦してみてどうだったか、憧れのイチローさんに対してどんなことを感じたか、みたいなことに、ありきたりの答えを返すのはイヤだなと考えていました。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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