故障に泣いたシーズンの締めくくりは「4番・投手」での今季初完封勝利だった。それでも満たされない表情を浮かべた二刀流が思い描く未来、そして来年の動向について語った。(初出:Number937号[シーズン総括インタビュー]大谷翔平「今年もうまくなれた」)
ファイターズの長年のファンとして知られるコラムニストのえのきどいちろうさんが、おもしろい喩え話をしていた。
「かぐや姫は月へ帰るのだ」
なるほど、言い得て妙だ。かぐや姫がいつの日か月に帰るのを誰もが知っているのと同じように、大谷翔平がいつの日か、メジャーリーグへ行ってしまうことを、今や誰もが知っている。そしてその日が目の前まで近づいていることは、いつしか既成事実として世の中に広がっている。
しかし、大谷はそれがこのオフだという ことは、公の場では一度も認めていない。 そのことについて、大谷はこう言っていた。
「周りが言うだけで僕は何も言ってないので……やっぱり100%、120%行くとならなければ言葉には出せません。99%でも無理ですし、ここ(ファイターズ)に残る可能性もなくはないので、そこは慎重になるかなと思います。周りは他人事だと思 っていろいろ言いますけど(笑)、僕やファイターズの人たちにとっては大事なことですし、5年間、応援してくれていたファンの人たちのことを考えると、軽い気持ちでそういうことは言えないと思います」
確かに、大谷の周りからはこのオフのメジャー移籍へ向けて、さまざまな準備が進 んでいることは伝わってくる。それが大谷の意思に基づいていることも間違いない。 ただし、大谷がごく近い人に明かしているのは『このオフに行きたい』という強い決意だけで、細かいことには例の如く無頓着だ。周りがどんなに騒々しくなろうとも、 日々、彼が夢中になっていることは何も変わらず、一つだけなのだ。
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photograph by Nanae Suzuki