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[盟友たちの回想]稲本潤一/播戸竜二/加地亮「黄金世代と太陽の引力」

2023/02/15
1979年、多くの才能が世に誕生したのは、彼に吸い寄せられたからではないだろうか。日本サッカー史に燦然と輝く彼らの物語は、この天才との出会いから始まった――。

 出会いの瞬間は、15歳のときだった。

「正直、当時のプレーの印象はそれほど残ってないんです。伸二よりも……」

 大阪からほとんど出たことがなかった稲本潤一は、中学生のときに初めて年代別代表に選出された。磐田市のホテル、二人一組の相部屋相手は静岡出身の先輩。サッカー王国の静岡は当時選出人数も多く、部屋には同郷の選手が集まってくる。

「その部屋になんでか知らんけど、(小野)伸二も高原(直泰)も来ていたんです。同部屋の先輩目当てで何人かが部屋に集まるようになっていて、それが伸二との初めての出会いでしたね」

 大阪でサッカーに明け暮れた稲本は、他県の選手の名前も評判も聞いたことがなかった。初めての中学生年代最高峰の舞台は、「すごい選手ばかり」と面食らった。

「衝撃というか、こんなにうまい選手がいるのかという選手ばかりでした。優秀な選手が集まってプレーする機会となると、全然違うんですね。やっぱり静岡の選手はすごかった。全員のレベルが高いイメージでした」

 そのなかに小野伸二もいた。ただピッチ上では、稲本の目には全体のなかの一人という印象で映った。

「当時はそこまでではなかった。それよりも、他の選手の方がすごかった記憶ですね」

 中学生時代、稲本にとって小野はいつも代表合宿で会う“大阪以外の仲良し”といった存在だった。

 その後も年代別代表の活動には常に選出された。そのなかで徐々に顔とプレーが一致し、親交を深めていった。当時稲本にとって、「他の選手がどうというより、なんとかしてこのメンバーに残ってついていかなければいけない」という思いが強い場所だった。

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photograph by AFLO

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